第3話
私はまずかったか、と道端に残る雪と大きくなりつつはあるが、まだ原型を留めているフキノトウを見ながらそう思った。
「三田村さあ、ちゃんと雨具はもってきたよなあ」
「当たり前だろ、君が持ってこいと何回も言うから」
「ああ、それさ、今のうちに来た方がいい」
「なんでさ」
「そのうち分かるから。俺も着る」
私たちは雨具を取り出して、着用した。三田村、悪い、今回はちょっと時期が早かったみたいだ。
私と三田村は登山口の小さな橋を渡り、登挙を始めた。春の日差しが眩しい。眩しいのは日差しばかりではなく、点々と、というよりはかなり土と雪とが半々で構成される地面からの反射のためでもあった。
「三田村さあ、替え靴下もってきたよなあ」
「ああ、持ってきたよ。それだって、君が言うから」
「そうだっけ、俺昨日、君んちでかなり飲んでたから」
「あんなに飲まれるとは思わなかったよ。せっかくピュアモルト買ったのに空にしやがって」
「空だったか、悪かったよ、金なくてさ、飲んでないんだもの」
そんなに飲んでたのか、まあ、いい、今日はこいつを連れてきてやったということで。息の切れる急坂が始まるとともに、道を雪解け水が流れだしてきた。たちまち二人の靴はびしょ濡れになった。
札幌市には
生物も多様で、リスが非常に多い。もっとも臆病なエゾリスは見かけない。図々しいシマリスは人目につくが。生き物たちの水源はこの雪解け水、というわけだ。
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