AFTER REPORT1 学友社刊『高校現代社会』第6章『鎧獣の発生と対策』抜粋と補足

 鎧羅15年(20XX)年12月、従来地球上で観測されていた生物とは大きく特徴の異なる生命体、鎧獣が新たに発見された。愛知県花草木市北東部にあるショッピングモールに出現した鎧獣は施設を破壊し、多くの死傷者を出した。この事件を機に多くの鎧獣が破壊活動を行ったが、当時生物学博士であった木皿儀儀典の尽力により鎮静化。翌3月に同市北東部で起きた大規模な爆発事故の後、殲滅宣言がなされた。それ以後、現在に至るまで新たな鎧獣の出現は報告されていない。

 約3か月に及ぶ鎧獣たちの活動はメディアに多く取り上げられ、その中でも破壊活動を行う鎧獣と敵対する鎧獣の存在が複数回確認された。木皿儀は後にその鎧獣を自身であると告白し、鎧獣に人間と一体化する能力があることが判明した。

 鎧獣の活動は花草木市を中心とし、同市は大きな被害を被った。現在、市は国と県によって再編され花加護市、草霧市、木々特別地区の三つに分かれている。木々特別地区には鎧獣研究所が設立され、木皿儀は初代所長となった。

 研究所では現在も鎧獣の研究が行われているが、現在もその生態は多くが謎に包まれている。


 実に迂遠な書き方で、『奥歯に物が詰まったような』言い方とはまさにこのことだろう。4年前の事件は周辺住人の危機感を煽り、あの地域だけ世紀末に近い様相を呈していた。鎧獣についても憶測が憶測を呼び、従来の生物の突然変異、人体実験の末生まれたバケモノ、果ては宇宙人とまで言い出す始末だった。まあその実宇宙人というのが一番正解に近いのだが。ともかく、当時戦ったわたし(決して木皿儀ではない)を鎧の英雄としてあがめる胡散臭い宗教団体まで生まれる始末だったから、当時の混乱ぶりは推して知るべし。

 なお、我が草霧高校で使用される現代社会の教科書には鎧の英雄という記述はない。一方で問題集には確認できた。当時は混乱の真っただ中だったため、その中で生まれた言説の中で何を教科書として採用するかはかなり出版社の判断によるところが大きいらしい。当時の空気感を知るために載せるべきか、いたずらに風説を載せるべきではないのか、答えの出ない問題だ。

                                筒ヶ原唯筆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鎧獣LOADING 紅藍 @akaai5555

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ