グルメ

「聞いてくださいよぉ! 俺、自分で言うのもなんですけど、グルメなんっすよ〜」

「ほお、それは興味深いね」

「でしょ?

 ほら、肉は熟成させるのがうまいってよく言うじゃないですか。アレですよ」

「なるほど。じゃ、熟成庫に立派な肉をたくさん吊り下げて熟すのを待つ、アレかい? それはグルメだねえ」

「いやあ、あんな辛気臭いとこに肉を入れちゃダメダメ」

「というと?」

「天日干しですよ〜。ほら、うちのボスが残した肉、あれをね、アツアツのお日様の下にじっくり晒すんっすよ。だんだんいい匂いが漂ってきて……そこからあと1日ぐっと待ったら食べ頃っす!」

「あ、あの君……

 それは、熟すというより、腐敗っていうやつじゃ……?」

「へ? そんな難しい言葉は知りませんけどねえ、学がないもんで。とにかくこれ、最高っすよ! トロッと柔らかくて、香り高くて……ああそうだ、よかったら今度その極上肉をお持ちしますよ!」

「あ、ああ〜〜! うーん嬉しいけど今回は遠慮しとこうかなあっ!

 それよりも、僕の好物の話を聞いてくれるかい?」

「へえ、楽しみっすね」

「僕は根っからのベジタリアンでね。ごそごそした硬い野菜ほど好きなんだ」

「硬いの? そりゃ変わってますね」

「そう。それをね、ゆっくりと噛む。ゆーっくり噛んで飲み込む。

するとね、しばらくすると戻ってくるんだ」

「は? 戻ってくる……なにが?」

「だから、一旦飲み込んだ野菜がだよ」

「……はあ?」

「とにかくね、その戻ってきたところが最高に美味なんだ! 絶妙なとろみと、複雑な味わいでね……

 そうだ! 戻ってきたものを、今度君にもご馳走しよう! 今すぐでもいいぞ。ちょっと待っててもらえれば……」

「うあぁぁ〜〜いいっす!! それだけは勘弁……じゃなくってお気持ちだけでもうっっ!!」

「そうか……

 じゃ、お互いの好物の味を楽しむのはまた次回だな、残念だが」

「そうっすね……ほんと残念っすけど。

 あ、仲間呼んでるんで。また!」

「ああ、またな」



「……水牛さん……」

「ハイエナくん……」


「「その好物、生理的に無理……っていうか、もう思い出したくないヤツだから……」」




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