残念男子で有名な俺が、美少女だらけの生徒会に入ってしまったのだが。
筆之介
第1話 入学式も平凡に過ぎていく。
入学式。
それは新たな生活のスタートであり、それまでの長期休暇の終わりを意味する。
そんな人生の大きな一歩とも言えるイベントに参加する事となった1人の少年がいる。
そう!我こそは!
「ちょっと銀河ー!入学式早々遅刻する気なのー?流石に悪目立ちしちゃうよー?」
…人がせっかく空ぅ前っ絶後のぉ!超絶怒涛の自己紹介しようとしてんのになに先に名前だしてんだよ。
俺の名前は上代銀河(かみしろぎんが)。
今日から私立桜ノ島高等学校に入学することになった新一年生。
「はいはい。行きますよ。行けばいいんでしょ」
まあ入学式早々遅刻するようなかなり不真面目な新入生ですけどね?
俺は階段をのんびりのんびり降りていく。
「なに不貞腐れてんのよ?急がないと間に合わないよ?朝ごはんも食べてないでしょ?早くしてよもぅ」
こうガミガミ朝から言われると頗るやる気が起きないんだよなぁ。
「お前は俺の母ちゃんかよ…」
今喋っている、この少し緑がかった黒髪ショートヘアの女の子は俺の幼馴染み。
「銀河のママってこんなにいい人なんだね。とっても尊敬します」
「いや自分で自分の事いい人って言ってる奴は大抵大バカだぞ」
彼女の名前は皆川桜(みなかわさくら)。
俺と同じ私立桜ノ島高等学校の新入生。
ていうかなんでうちに入れてんだよ…どんなけ無防備なんだようちは。
「はいはいそんなことどうでもいいから早く行くよー」
まあうちが無防備な理由の一つとしては俺が基本一人暮らしだからってことがある。
親は両方とも東京で仕事をしているらしく一年に数回帰ってくる程度。
姉もいるにはいるが一人暮らしをしているため帰って来ない。
よって家にいるのは俺1人になってしまうわけだ。
まあ親がお偉いさんなだけあってお金には困ったことはないが。
俺は朝飯を食べて、歯を磨き、顔を洗って、寝癖でボサボサな真っ黒な髪を手櫛で解いた。そしてスクバを背負う。
「よし。んじゃ行くか」
「早くしないと地下鉄来ちゃうよー」
うちから徒歩2.3分の駅まで少し早歩きで向かう。
あ、ちなみにここは愛知県名古屋市。
日本三大都市の一つだ!とっても偉大なのだ!
まあ東京とか大阪とかに比べると特になんもないところなんだけどねぇ。
そんな名古屋の地下鉄をこれから三年間乗り回すとなるとワクワクするよね!あれ?しない?
改札について定期券をICカードの所にタッチして軽やかに改札を抜けて行…
『ピンポーン』
ガンッ
『もう一度ICカードをタッチして下さい』
…なにが軽やかだよ超恥ずかしいよ。
「銀河だっさwうけるwプークスクスw」
あいつあとでぜってぇしばく。
改札との戦闘を繰り広げたあとすぐに電車がホームに到着した。
そこから10分ほどかけて乗り換えの駅まで名城線を乗る。
電車の中では
「あの子かっこよくない?」
「隣の子も可愛い!付き合ってるのかな?」
なんていう会話が聞こえてくる。
ふむふむ。ふむむ。
まあ俺は自分で言うのもなんだが顔は悪くない方だと思う。
だが、俺はとてつもなく曲がった性格をしているらしく、本性を知らないうちは面食いどもが好意を寄せてくるわけだが、本性を知ってしまうと残念男子として扱われてしまうんだ。酷いよママン!
そして隣の女子、桜は美少女という言葉を形にしたような容姿をしている。
少し幼い顔立ちに抜群のスタイルと来た。
そりゃもうめっちゃモテモテだったようん。
だけど告白されるたびに決まって
『好きな人がいるからごめんなさい!』
と言って断り続けている。
いっそのことそいつに告白しちゃえばいいのに勿体無い。
絶対オッケーだすでしょ。
そんな事を思いながら桜の顔をみるとなんか若干頰が朱に染まっていた。
「そんな怒んなよ。相手が俺で悪かったけど赤くなってまで怒る必要ないじゃん?」
ほんと相手が俺でごめんね?だからそんなに怒んないでね?
「え?嘘赤くなってる?てか別に怒ってないし。」
俯きながら桜はそう言った。絶対怒ってんじゃん…
そう思いながらも駅に到着し、そこから桜通り線に乗り換えて学校の最寄り駅まで15分程度電車に揺られる。
電車の中ではやることが無く、スマホでゲームをしている。ちっ。また☆4かよ。
ガチャがハズレで機嫌を損ねているうちに学校の最寄り駅に着いた。
駅から徒歩10分程度の所に桜ノ島高はある。
時間がやばいので少し早歩きで高校まで向かっていると桜が話しかけて来た。
「楽しみだね高校生活!」
うーん。正直なところ、
「そうでもなくね?」
「…そうやって人に合わせない発言ばっかしてるからモテないんだよ?」
「ほっとけ」
そんな会話を続けていると目的地に到着していた。
中に入るとクラス分けの紙をこの学校の先輩方が配っていた。
その紙を受け取り知りもしない人の名前を適当に見ていると一つだけ知っている名前を見つけた。
「桜、お前一緒のクラスじゃん」
「おー!ほんとだ!やったね銀河!」
「そうだな。知り合いがいるのは大きいな」
一緒のクラスになったことで喜んでいると、西門の前に高級外車が止まった。
そして中から桜と同じ制服を着た紫がかった黒髪ロングヘアの女の子が出てきた。
「綺麗な子だなぁ」
気付いたら俺はそう呟いていた。
「ふーん。銀河はああいう人がタイプなんだ?」
桜は頰を膨らましてジト目で見てくる。
「いや、別にタイプとかじゃなく率直な感想を述べただけだ。つか俺は色恋沙汰なんて興味ねぇし。俺は彼女いない歴=年齢の男だぞ舐めんな。てかなんで拗ねてんだよ。」
「いや自信満々に言うことじゃないし…。べっつにー?拗ねてないしー?」
「なんかごめんね?」
なんも悪いことしてないのに謝らなければならないこの世界って本当に酷だよね。。
それよりもさっきの綺麗な女の子。
どっかで見たことあった気がするんだよなぁ。まぁ気のせいか。
「銀河ー?早く行くよー?」
「おぉう。今行くー」
そんなことを考えながら体育館へと移動して指定された席に座る。
桜とは席が離れてしまい、周りは知らない人だらけな状況である。
席に座ると隣の男子が声をかけてきた。
「初めまして。俺は兵藤爽太(ひょうどうそうた)。君の名前は?」
なんかキザな野郎だな…
顔は爽やかイケメンだし声も透き通ってるような爽やかさだし。
名前も爽太とか爽やかさ満点じゃねぇか。
つかなんだよ君の名前は?って。お前絶対女の子と体入れ替わったことあるだろそうだろ?
「おう。俺は上代銀河。よろしく」
「銀河か。これから仲良くしてくれよ」
そんな自己紹介を終わらすとちょうど式が始まった。
開式の言葉、校長先生からのお話と坦々と式は進んで行った。
そして次は新入生代表挨拶。
『新入生代表の神城梓(かみしろあずさ)さん。舞台の方までよろしくお願いします』
ぼーっとしながら舞台の上を見ていると、さっき見た紫がかった黒髪ロングの女の子が舞台の上に上がっていた。
へぇ。あの子俺と一緒の苗字なんだな。
彼女の挨拶はそりゃもう完璧と言えるものだった。一切噛むこともなくスラスラと文字を読んでいく。透き通った綺麗な声はあの容姿にぴったりだと思う。
そんな挨拶の中でわかったのは彼女はこの学園の学園長の孫らしい。
そりゃあんな高級な外車で登校してくるわけだわ。
そして彼女は6月から生徒会長になる事を学園長からお願いされているらしい。
まあこんな感じに挨拶も終わり。
その後閉式の言葉を行い入学式は終了した。
そこから各生徒が決められた教室に行き同じクラスの面々と顔を合わせる。
ちなみに俺は本校舎4階の一番奥のA組。
うちの学校はA〜Hまでが普通科進学コースで、IとJが普通科特進コース、KとLが専門学科と分かれている。
特進が本校舎5階、専門が本校舎3階、進学が本校舎4階となっているらしい。
自分のクラスにつき、指定された席に座ると初顔合わせとなるクラスメイトたちが席に座り始める。
そしてここでも俺の隣は爽太だった。
「銀河が隣か。なんかよかったな喋った事があるやつがとなりで」
こいつは常に爽やかな野郎だな。イケメン怖し!
「そうだな」
そんな短い会話を済ましてクラスを見渡していると桜が手を振ってきた。
…やめて!恥ずかしいからやめて!
目だけでやめろと主張するとその主張が届いたのか桜は手を振るのをやめた。
そうこうしているうちに担任と思われる見た目が若い茶髪女教師がはいってきた。
「はい注目!これからお前らの担任としてこのクラスを受け持つことになった高杉麗華(たかすぎれいか)だ。私のモットーは初志貫徹!そしてこのクラスでの初志は3月までに全員が仲良くなれるクラスにすることだ。これから仲良くやっていこう!よろしく!」
…率直な感想としては
「見た目の割に熱血教師かよ…」
「人を見た目で判断するもんではないぞ少年。少年よ。君の名は?」
しまった声に出てたのか。
いやつか先生も君の名は?って聞いてくんのかよ。どんなけだよ君の名はパワー。
もう全米が泣いてるんじゃない?
「はぁ。上代銀河っす」
「ほう銀河か。これからどんどん指導してってやるから覚悟しとけぇ?」
うわぁ。絶対めんどくさくなりそうやん…
てかおい。俺は見たぞ。桜お前何肩震わしてんだよ。笑うな恥ずかしい。
そしてこの学校についての説明などの話を先生にしてもらったあとに俺は長期休暇のせいで忘れていた俺の欠点の一つを思い出してしまった。
それを思い出したきっかけは先生の一言。
「よし。春休みの入学課題集めるぞー」
あ…
普通に忘れた課題…
そう。俺は結構頻繁に忘れ物をする忘れん坊さん(笑)だったのだ。
ちなみに中学の時のあだ名は『忘却銀河』だった。普通にカッコいいと思ってた俺はM気質なのだろうか。いや絶対違う。
普通に初日から提出物を出せないのはきついから同志がいないかと周りを見渡すと桜と目が合った。
がしかし。桜は口パクでバーカって言って目をそらしやがった。
ちっ。あいつ俺の忘れ癖覚えてたのに教えてくれなかったのかよ。
結局、色々と試行錯誤を繰り返したが結局間に合わず先生に自白。
そのあときっちり学校清掃を手伝わさせられましたとさ。
そんなこんなで俺の高校生活が始まった。
始業式から1週間後には授業が始まり、俺の忘れ癖がフル稼働しまくりだった。
まじでどうして自分でもこんなに忘れ物すんのかわかんねぇ。。。
忘れ物をしてはクラスメイトの目前で先生に弄られ、クラスメイトに笑われる毎日を過ごしていた。
ちなみにいうと笑いの発端になってんのは桜と俺の初めての友達の爽太の2人。
あいつらまじで事あるごとに
「銀河ー。課題やったぁ?(笑)」って大きい声で言いやがるから自白するしかねぇんだよちくしょう。
そして俺は小学校の頃からやっていたバスケットボールを続けるためにバスケ部に入部した。
一応それなりの実力はあったから1年にしてスタメン入りが出来た。
そしてまあ部活仲間がたくさん出来たわけでして。
ちなみに爽太もバスケをやってたらしくバスケ部仲間としても仲良くなった。
なかなか学校生活は充実していた。
そんな日々を過ごしていて気付いたら6月。
毎週火曜に朝会があるうちの学校。
6月に入って最初の朝会の時に、俺の高校生活は終わりを告げた。
残念男子で有名な俺が、美少女だらけの生徒会に入ってしまったのだが。 筆之介 @fudenosuke1225
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