最終話 後日談(主人公の告白結果も踏まえて)
結局のところ、小松田は元より、池山も千恵香の誘拐した罪で警察に捕まった。
池山は罪を認めるも、小松田はのらりくらりと話すだけらしい。つまりは、自分は誘拐に直接関わってない、巻き込まれただけということだ。俺には信じる気が出ない内容だが。
千恵香は、予想通り、あの一軒家、池山の家にある地下室で見つかった。今は病院にいて、衰弱した容態から回復に向かっているそうだ。
俺は時折、千恵香の見舞いに行っては、二度とこういうことがないように祈る。
で、
教室内の席で俺は、ぼんやりと窓に映る青空を眺めていた。
「高井くん」
「よお、片瀬」
俺が返事すると、片瀬は表情をほころばせた後、足を止めた。
「千恵香ちゃんは元気そう?」
「一応な。もうすぐ退院できるだろうな」
「そうなんだ」
「どうしたんだ?」
「ううん。あんなことがあって、少しはわたしに責任があるのかなって、思ったりするから」
「別に、片瀬が責任感じることはないと思うけどな」
「でも、ちょっとだけでも感じはしないと、千恵香ちゃんには申し訳ないかなって」
「千恵香は関係ないだろ?」
「でも、わたしが、高井くんのことを好きにならなければ、こんなことにはならなかったと思うから」
「それは結果論に過ぎないだろ?」
「そうだね。わたし、考えすぎかな」
「考えすぎだな」
俺が言うと、片瀬は、「そうかもしれないね」と楽しげに口にする。
「ところで、高井くん」
「何だ?」
「まだ、千恵香ちゃんのこと、好きなのかな」
「あ、当たり前だろ」
俺は恥ずかしくなり、片瀬から目を逸らしてしまった。
「そうなんだ」
「悪いかよ」
「ううん。別に。もし、気が変わったら、わたしと付き合ってくれないかなって思って」
「だから、それは前にちゃんと」
「わたしは一度フラれても諦めない女の子だよ。真美にも、『諦めないで』って言われてるから」
「池山の奴……」
「無理にとは言わないよ」
「当たり前だ」
俺は片瀬に答えた後、再び、空を見る。
雲ひとつない澄み切った青が広がる光景に、俺はため息が漏れるだけだった。
前の見舞いで千恵香に告白してフラれた俺。片瀬のタフさにすごいなと感じずにはいられなかった。
「なあ、片瀬」
「何、高井くん」
目を合わせてきた片瀬は、晴々とした表情をしている。
俺は彼女の姿が眩しく感じてきて、直接目にすることができなそうだった。
「悪い、何でもない」
「何だかわからないけど、元気出して、高井くん」
俺の肩を軽く叩くなり、場を後にする片瀬。
遠ざかっていく片瀬の背中。
俺はぼんやりと、もう一度千恵香にアタックしてみるかと気持ちを新たにしていた。
下駄箱に入っていた手紙は、ラブレターでなく、脅迫状だった。 青見銀縁 @aomi_ginbuchi
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