事故にあった市川真音は、迷い家的な不思議な異世界に迷い込み、そこで呉葉と名乗る
不思議な女性と邂逅する。
その出会いのなかで、二人は互いのことを知り、そして自らを省みる。
とにかく、謎の女性、呉葉さんがとても可愛らしく魅力的。
これは作られた可愛らしさではなく、おそらくは作者さまの人柄が行間から滲みだした結果であろうと勝手に推察させていただく。
なんとなれば、本作で描かれる異世界の、ちょっとした小道具や登場人物たちの言葉、そこにある事物に対する物の見方、それらを描写する文章など、すべてに、なんとも優しく繊細な女性らしい気遣いが感じられるからだ。
小手先の文章テクニックでは、なかなかこういう世界は現出させることはできない。本物の女子力とはどういうものか、まざまざと見せつけられた感じである。
カクヨムにはこういう書き手もいるのかと、感心させられた。
こちらの物語の異世界は、青もみじの中にひっそりと佇むお屋敷です。
そこには美しい女性が独りで暮らしております。
先代、先々代から受け継がれてきた昔ながらの暮らしの中に、ほんのちょっぴり現代のスパイスを入れながら──
そんな穏やかな空間の中で、主人公・真音(まのん)は目を覚まします。
けれども自分が何故そこで寝ているのか、どうやってここまで来たのか、ここがどこなのかが全くわかりません。
そこに現れたのが、お屋敷に住む “呉葉” と名乗る女性。
そこから若い女性ふたりの穏やかでちょっぴり不思議な交流が始まります。
呉葉さんが人ならざる者であることは序盤からうかがえるのですが、チャーミングで少し天然の彼女にはきっと誰もが心を許してしまうような温かみがあります。
夏の信州、爽やかな風が青もみじをかさかさと揺らす、そんな静かで穏やかな異世界でのひとときを、あなたもどうぞゆったりとお楽しみください(^^)