パウバルマリ食堂は、異世界とつながった定食屋。異世界で仕入れた食材をつかったモンスター料理を提供する。そしてその店を切り盛りするのが、おかん。
定食屋は、現世界の住人と異世界の住人が常連として訪れる、ボーダレスな空間。
本作の秀逸な設定は、異世界ではモンスターの肉を食べる習慣がない、というかその技術がないこと。そこに目を付けたおかんが、異世界から仕入れたモンスターの肉を調理して提供するため、現世界人も異世界人も、その「ここでしか味わえない料理」を求めてやってくること。
ところが大事件が起こる。なんとおかんがモンスターにさらわれる!
もちろん息子のユウトはおかん救出に動き出すのだが……、有給が……。
とにかく世界観のずれっぷりが素晴らしい。
強烈なキャラクターおかん、ブラック企業に就職してしまった息子のユウト、異世界の戦士エリカ、意識高い系の魔法使いや、居るんだか居ないんだかわからないおとん(笑)。この各人それぞれに、ちょっとズレた役回りを大真面目に演じてくれる。
ハラハラドキドキしつつ、なぜか安心して見守れるストーリー。特にタイムリミットのある魔王討伐の「これ間に合うのか?」は半端ない。そのくせ、タイムリミットの理由もくすくすと笑えてしまう。
とにかく、突っ込みどころが多い。一歩踏み出すごとに爆発する地雷原を歩くように、突っ込みどころがつぎつぎと用意されている。ここは突っ込んだら負けだ。「突っ込んじゃダメだ、突っ込んじゃダメだ」と唱えながら読もう。
登場シーンは少ないのに半端ないです――おかんの存在感。
それは非日常さえも日常に変えてしまいます――有無を言わせず(笑)
何と言っても、カウンターで魔王が世間話をしながらランチを食べているのですから。魔王さえも小物に見えてしまう、カリスマ的風格。
さらに「おふくろの味」という言葉が妙に印象に残りました。強いだけじゃなく温かさも兼ね備えています。ここが魅力なのでしょうね。月並な言葉ですが「スゴイ」の一言です。
次なるエピソードを期待せずにいられないのは、ボクだけじゃないはず――きっと作者はやってくれます。まだコンテスト期間は始まったばかりですから時間はありますよね?(おいおい)
大阪には縁も所縁もないのに、何故か関西弁の「おかん」
そのファッションセンスも、私たちが想像する「大阪のおばちゃん」そのものです。
そんな野性味溢れるおかんが切り盛りするパウバウマリ食堂。
饗されるのは異世界の素材で作られる絶品お袋の味。
両方の世界からのお客さんで、食堂は今日も大盛況。
そんなある日、異世界のモンスターにオカンが攫われた!
救出に向かう息子。
そこに立ちはだかるこちらの世界の事情。
おかんは無事なのか?
息子はおかんを助け出せるのか!?
緊迫のバトル。残されたおとんの想い。強い家族の絆。そして、巨大な魔王の脅威。
とにかく、笑いが止まりません。
【作品概要】
さらわれた姫(おかん)を助けだせ!
愛(親子)と勇気(サラリーマン的)の異世界ファンタジー!
【作品のみどころ】
ハイテンションで笑いたっぷりに届けられるマシンガンコメディー。
だがその根底に流れるオカンの想い、オトンの想い、そして息子との家族の強いきずな!(ちょっと大げさです)
異世界の魔物とのバトルシーン、なぜか食欲をそそる異世界料理の数々、息子の抱える現代社会への問題提起。
欲張りなほどにテーマ・見どころを盛り込みながらも、語り口はあくまで軽く、力強く飄々と物語は突き進んでいきます。
といろいろ書いてみましたが、とにかく問答無用でパワフル、そして面白い。
こういう笑いを書かせたら本当に天下一品です。
ぜひ読んでみてください。