第5話「姿見から現れたのは。」

『まぁまぁ、そう言わずに…』


そこには見知らぬ男性がにこやかに立っていた。






「え…鏡から…人が…何が起こって…」


私は混乱していた。鏡から人が出てくるなんておとぎ話じゃあるまいし…。




『これはこれは…すみません、驚かしてしまいましたか?』


目の前の男性はこちらをみてくすりと笑うとすっと頭を下げた


つられて私も頭を下げる。




「えっと、あなたは何者でどこの誰なのですか…?」


鏡から出てきたって事は狼飛さんの関係者だろうけど…




『申し遅れました、私はそこにいる白神 狼飛の上司の黒桜 鏡(クロウ キョウ)と申します。


そこにいる狼飛と同じ死神です、名刺をお渡し致しますね。』




黒色の名刺に白色の文字で名前と連絡先が細かく示されているが


住所は暗号のような文字が並んでいて、よくわからない。


名刺を眺めたまま固まっていると鏡さんが咳払いをした。




「あ…すみません…私は宇佐見 月乃です…。


狼飛さんの上司なんですね、わざわざ名刺までありがとうございます。」




ぺこりと頭を下げると黒桜さんは


『それでは、本題に移りましょうか。』と微笑んだ。




『白神をここに置く事に金銭面、身の安全を不安に思う事は承知しています。』


少し肩を落として淡々と話し始める。




「じゃあ…」


引き下がってくれるのかなと思ったのもつかの間




『金銭面は私が全面的にサポートしましょう、宇佐見様にも苦労はかけさせません。


身の安全も安心ください、私が今白神につけた指輪をつけている限り


白神は宇佐見様を命に代えても守ります。


そして、私達死神は本来普通の人間には見えない仕組みになっているので


他の人に変な目で見られる事もございません。


死ねないのを理由にしていましたが、これは白神のけじめなのです。


もし断られるようでしたら…残酷ですが、この場で“始末”しなくてはなりません。』




そう言うと黒桜さんは鎌を手に取り狼飛さんの首に刃をあてがう。


全てを諦めたような瞳をする狼飛さんをみた私は考えるよりも先に口を開いていた。




「わ、わかりました!わかりましたから、そんな物騒なもの早く仕舞ってください!!」


あーあ…馬鹿だな、私は…。そう思った。




『それはそれは、納得いただけて良かった。


大切な部下を始末しなくて済みました、これから白神をよろしくお願いします。


私はこれで失礼致します、やり残している仕事もあるので。


何かありましたら、何でもその名刺の電話番号に連絡をください、私が対応致します。」





それだけ言うと黒桜さんは姿見に帰っていった。




こうして私と狼飛さんは一緒に暮らす事になってしまいました。





《続く》

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死にたがり兎と死神オオカミ 吐血猫 @toketuneko

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