第4話「 死神 」


私の前に現れた謎の少年はなぜか私の名前を知っていた。

「あなたは一体…?」


「えっと、話してなかったっけ。」

目の前の少年がはて?と小首を傾げる


「なぜ私が名乗ってもいないのに、私の名前を知っているのですか…」

勇気を出して本題へ


「えっと、いろいろあって言い忘れていたみたいなんだけど。僕は白神 狼飛(シラガネ ルウト)っていいます、職業は死神をしています。君が気になっている名前の件は、僕が業務命令で君を迎えにいくように言われたから君に会う前に書類で確認したんだ。」

そう嬉しそうに話す目の前の少年…


「あの、えっと死神?迎え?それってなんのはなし…」

頭が混乱する、私は生きているのか?それとももうここは死の世界なの?

私これからどうなるの?どうされるの?

頭の中が不安で満ちていく。

その様子を見かねた少年が口を開く。


「あ、ごめんね。いきなりそんなこといわれても困っちゃうよね。

今からちゃんと説明するねっ、宇佐美…月乃ちゃんでいいかな?

僕のことは気軽に狼飛って呼んでね!」

一瞬困ったような表情になるもすぐに優しい表情になり再び話し出す


「まずはじめに、月乃ちゃんは自殺をしようとしていた。

そして月乃ちゃんは強大な運命の力によって死ぬ事が決まっていたんだ。

僕は月乃ちゃんの死後、道に迷ってしまわぬように、業務命令の通りお迎えをして道案内をして送り届けるはずだったのだけれど、予想外の事が起こってしまった。

本来なら死んだ後でないと見えないはずの僕の姿がなぜか生きている月乃ちゃんに見えてしまった。

最初に声をかけられた時、なにかあったのかとそっちをみたんだ。

そしたら月乃ちゃんと目が合ってしまって、僕の事が見えていると確信した瞬間。

縄から手が離れ後ろに倒れる月乃ちゃんが見えて僕はとっさに助けたんだ。

本当は上の人に連絡してもう戻る予定だったんだけど…」

そこまで話した途端、うつむいて黙り込む狼飛。


「えっと、狼飛…さん?」

心配になって声をかけてみると、狼飛さんはおずおずと口を開く。


「あの、上の人に連絡をしたら…。

今回のミスは僕の責任でもあるのだから月乃ちゃんが生きたいと思える理由が見つかるまで死なせるなと、僕がその、サポートをしろと申されまして。

ついでに…ここでお世話になれとも…あの、ご迷惑なのはわかっているのですが…っ」

そこまで話すと子犬のような泣きそうな目でこっちを見てくる


「えぇ…っ、死ねないなんて私困りますっ!

それに、ここで一緒に暮らすの…ですか?

生活していくにあたってお金の事とか…どうするんですか。

狼飛さん未成年でしょう?私にはそんな余裕は無いですし…。

そんな泣きそうな顔されたって…そればかりは困ります…」

かわいそうではあるが、困るものは困るのだ、仕方ない。


「なので悪いですけど…お断りしま…っ!?」

そう断ろうとした時だった。


『まぁまぁ、そう言わずに…』

部屋の隅に置いてあった随分古い姿見から人影が浮かび上がり

そこには見知らぬ男性がにこやかに立っていた。



《続く》


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