い・け・な・い・遊・戯

チョコバット鵜飼

第1話

何か蒸し暑かったり肌寒かったり変な気候なので、僕が幽霊に間違われた時の話でも以下に記しておきますね(何)


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今をさかのぼること20数年。

僕がまだ中学2年生のチェリーボーイだったころのお話。

 

夏休みにクラス合宿と称して1泊2日の小旅行をクラスの皆(もちろん担任も)と行いました。

行き先は丹波にある大江山山中の「青少年自然の家」。

平安の世に酒呑童子(しゅてんどうじ)の棲家と謳われた山。

 

クラスの皆と過ごす2日間。

昼は川辺で水遊び(男子生徒のポロリあり)、夕方はBBQに花火。もちろん先生指導のもと、宿題の時間なども。

 

で、夜も更けてきたらやっぱアレでしょ、肝試しでしょ。

 

暗い夜道をあの子と二人きり…


娘:何だか怖いわ…

僕:大丈夫だよ俺がいるから!もっと傍に、来てもいいよ

娘:キャ、目の前を何か横切ったわ…!

僕:大丈夫さ、何があっても君を守ってみせるよ!だからしっかり掴まって……って、そんなとこ掴んじゃダメーーーッ!

 

などとショッキングピンクの妄想膨らみまくりなのが思春期の男の常なんですが(仮)

 

そんな内心を包み隠すかのような渋面の僕のもとに、うちの班長がやってきて一言こう言い放ちました。


「うちの班、お化け役に当たっちゃった」


オマエ、俺のピンクの妄想を返せ…責任とって切腹しろ…などとはおくびにもださなかったんですが、相当落ち込んでたみたいです、その時の僕。

 

それならそれで一番美味しい役どころを掴みたいというのが人情じゃないですか。というわけで…

 

ゴール地点でほっと一息ついているカップルを驚かす役

 

という大役をゲットしたわけであります。

 

で、配置に付くわけですが…この、犠牲者を待ってる時間というのは恐ろしく退屈で心細くて。これこそ肝試しだよ…ってな感じでして。

 

ゴール地点には鳥居があって、その脇に隠れて犠牲者を待ってるんですが…背後の暗闇にお堂っぽいのがあって、そこから時折、何となしにイヤな気配が漂ってきたりするわけです。

 

蚊にも刺されるしさぁ、早く犠牲者来いよ!!!!!と、よもやブチギレの危機かと思しき僕を不意に強烈な光が照らしました。

 

え、何なに一体何事?!とそちらの方を見遣ると、どうやら車のヘッドライトのようで。


鳥居から5mほど緩やかな坂道を下ると、そこには山奥に続いて駆け上がっていく片側一車線の道が走っていて、どうやらそこを走ってきた車のライトが不幸にも僕を映し出したというわけで。

 

折悪しくその時の僕は、正にイライラのピーク。こんな夜中に車乗ってどこ行きやがる…お前らアレか、カップルか…山奥行って人が見てないからといって(中略)んじゃなかろうな…などと勝手な妄想を膨らました挙句、逆恨み八つ当たりの鬼と化した僕は…


地面に這いつくばり

その車めがけて

トカゲのように

猛烈な勢いで

にじり寄っていってやったのです。

 

そりゃもう運転手大パニックですよ。

ギャギャギャギャギャギャッ、という壮絶なタイヤの軋む音を辺りに残し、絶望的なスピードで車は山奥へと駆け上がっていったのでありました。


それを見た僕は小さな満足感を胸に持ち場へと戻り、その日の肝試しをうまくやり終えたのでありました。





これには後日談があって。



 

 

その出来事から約2ヶ月ほど時を進めたある秋の休日。

 

僕は学校指定の模擬試験を受けた帰りにとある本屋に寄りました。その、いつも入ることの無い本屋で、何故かいつも読むはずの無い雑誌を手に取り、パラパラとページを繰っていたんですね。

 

大抵の雑誌には読者の投稿欄があり、僕もそういうのを読むのが案外好きなもんで、その日も何と無しにそれらを読んでいました。

 

瞬間、こんな見出しが僕の目に飛び込んできたのです。


『京都・大江山山中に少年の霊を目撃』


えっ、俺らが合宿行ったとこじゃんよ!と、びびりながら読み進める。ドライブ中に遭遇した怪を綴った投書であるらしい。


「…そして問題の場所に差し掛かったとき、僕の車のヘッドライトが妙なものを照らし出したのです。

 

紺色のタンクトップ、膝までのジーンズを履いた少年が、鳥居の横にうずくまっているではありませんか!」

 

…………これって、合宿の時の僕やん…?

 

「その少年はライトに照らし出されるや否やこちらに向き直り、猛烈な勢いで、まるで蜘蛛のようにこちらに這い寄ってきたのです!」


………僕確定やん?

 

…誰にも説明できない勝利の感覚に酔い痴れ、笑いを噛み殺しながら次のページをめくった先に…

 

「更に恐ろしかったのは…」


と、投書が続いている。………え、何…?

 

「更に恐ろしかったのは…

その少年を守るように

背中に覆い被さっていた

老人の凄まじい形相でした…」

 

慌ててその雑誌ほっぽり出して逃げ帰ったのは、言うまでもありません。

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い・け・な・い・遊・戯 チョコバット鵜飼 @wolfing777

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