灼熱甲子園

@b004j

第1話 国会

 20XX年、地球温暖化も留まることを知らず深刻化し「日本一暑い町」なんて謳い文句をどこも掲げることをしなくなって久しい日本。

気温を口にするのも暑苦しいので気休めに「日本一暑い町」と標榜していた町の最高気温を「現在の気温」あるいは「気象ニュースでの最高気温」を『最高温』として発表するのが習慣化していた。実際の気温に誰も頓着しなくなっていた。理由は暑いことに変わりはない。知ったところで「不要不急の用事以外の外出は控えるように」という自治体の呼びかけに従い屋内でクーラーを使用する以外取れる手段が無いからだ。

夏季(気象庁が『最高温』を発表してから最高温を下回る日が3日続くまでの期間)は在宅就業を、難しい職種は就業場所に室温を26度に維持すること義務付ける法律も施行され熱中症の対策も取られ暑さによる作業効率の悪さも事故率の上昇も軽減された。

それでもなお、甲子園では高校球児が熱闘を繰り広げられていた。

熱闘と言っても競技として成り立っていた野球も灼熱の中で選手たちがプレーし続けることが困難になり廃れてしまい映像でしか「まともな」試合を見ることが出来なくなっていた。

 10年前甲子園で高校球児が熱中症での死亡事故が相次いだ。世論は開催時期をずらすべきだとかいっそ廃止するべきだとか吹き上がった。遺族たちも草の根的に事故再発を避けるために活動を続けていた。

 被害者遺族。前田 理は熱心に国会議員へ陳情し続け

 

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