第24話 雨に嘲笑う。

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 これは僕が実際に体験し、起きてすぐにメモった悪夢です。



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 夢の中で雨が降っているのは珍しい。


 僕の記憶では、曇天や晴天はあっても雨模様の夢は初めてだった。


 例によって僕はこれが夢だとわかっている。


 こういうときの夢は「自分視点」ではないことが多い。

 まるでテレビを見ているような第三者的視点で見続ける夢だ。


 僕の見ている視界には「彼」がいた。

 これはいつ頃の「彼」だろうか。多分小学生だと思う。


 彼は雨の中、笑いながら走り、立ち止まり、僕が追いつくとまた走り出す。


 彼は笑い、走る。


 その笑い方は楽しそうと言うより、狂気をはらんでいる。

 あははは、ではない。ギャヒャヒャヒャ!という感じだ。


 そんな彼を追いかけなくてはならない。

 追いつけなくてこちらが歩きだすと向こうも止まる。


 追いつきそうになると走り出す。


 雨は容赦なく彼を濡らし、僕を濡らす。


 彼の姿が消えた。

 消えた場所まで行くと、彼は崖の下にいた。

 四肢が曲がり、首が反転している。


 それでも彼は笑っていた。ギャヒャヒャヒャ!、と。









 そこで目が覚めた。


 そして僕は一番の疑問に、暫く起き上がれなかった。


「彼」を知らないのだ。


 ぼくの友達に「彼」はいない。まったく知らない子だ。


 テレビで見て記憶に残っていたとかいう次元ではない生々しいリアルさがあるというのに、僕は彼を知らない。


 知らないのに「彼」を友達だと夢の中では信じ切っていた。

 あの「彼」は一体どこの誰なんだろうか。

 なんで笑いながら逃げていたんだろうか。


 わからない。

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僕の見た夢は君も見る夢 紅蓮士 @arahawi

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