第23話 誰もいない部屋。
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これは僕が実際に体験し、起きてすぐにメモった悪夢です。
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ここは薄く暗いマンション。
普通の1DKの部屋。
もちろん誰かが住んでいる部屋だが、僕の住んでいるところではない。
台所には炊飯器もあり、逆さに置かれたコップが炊事の後を物語っている。
だが、なぜか生活感がない。
理由は、この部屋の中に「人のいた気配」を感じないからだ。
そもそもここの主は男なのか、女なのか。
小奇麗で、無駄なものがない部屋だとしても、主の性別がわかるようなものがなにか一つくらいありそうなものだが、なにもない。
わかるのは、ここがただ薄暗くて、寒気がするほど怖いということ。
冷静になることは出来ない。とにかく怖い。
電気をつける? いや冗談じゃない! もしこの部屋の主に見つかってしまったら!
そう。
この部屋には僕以外誰もいない。だけど、誰かいる。
気配がするわけではないというのに、見られている感覚がすごいのだ。
ここで感じる怖さとは、不法侵入で捕まるとかいう怖さではない。
殺される、いや、死よりも怖い目に合うと本能が叫んでいる。
逃げよう。
誰もいないが誰かいるこの部屋から逃げよう。
玄関はすぐそこだ。
音がしないようにドアノブを掴み、ゆっくり開ける。
部屋の中の雰囲気が変わる。
耳がキンと鳴り、僕は転がり倒れるようにドアの外に出た。
開け放ったドアは、ゆっくり締まっていく。
締まり切る直前に、部屋の中から腕が出てきて、ドアを閉めさせまいと貼り付く。
白くて細い、女の腕だった。
僕は叫びながらドアを蹴り閉めた。
ぼとり、と腕が切れ、目の前に落ちる。
ドア横の格子のある窓は、さっきまで誰もいなかったはずの部屋の中にいる女の姿を薄っすらと透かし見せてくる。
その女は気が狂ったようにその窓に体を擦り付け、僕を威嚇してきた。
口を大きく開け、長髪を振り乱しながら窓を叩いている。
あれは腕がちぎれた痛みや怒りで叫んでいるんじゃない。獲物を逃した悔しさから悲鳴をあげているんだ。
早くこの建物から出なきゃ。
古いマンションなのか、廊下の蛍光灯は薄暗く、コンクリートは煤けて汚い。
だから、エレベーターでここから脱出するのは、すごく怖い。
エレベーターの中の密室でなにか起きたら………。
僕は階段がある非常ドアを開け、勢いをつけて飛び込んだ。
そこは暗い部屋の中。
さっきの部屋だった。
腕のない女がいて、残った片腕で室内灯の紐を引っ張って、電気をつけたり消したり繰り返しながら僕を見ている。
もう逃げられない。
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作者:注
おそらく、ほんの数分寝落ちしてしまったときに見た悪夢です。
少し描写を増やしていますが「知らない部屋から逃げ出したらまた部屋の中にいて貞子か伽椰子みたいな女に呪い殺される」という流れでした。
観念したら目が覚めました。あぶなかった。
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