老紳士のくだりは胸が苦しくなります。
誰かになりたい、こうなりたいと思うことは人にはよくあって、それは部分的に言えば例えば容姿だったり、才能だったりするのでしょうが、その中でも声に焦点をあてているのは珍しいなと思いました。ここで面白いなと思ったのは全員が全員、最初の少女のように「理想の美しい声」を求めているわけではないところです。単純にステータスをあげるためでは無く、なにか目的のための手段としてなりたい声を使っているところがすごく人間臭くて、面白いなと思いました。ちょっとほの暗い童話のような雰囲気も素敵です
ツイッターに挙げた、と書かれているとおりショートストーリーの連続だが、それがとてもテンポ良く読めたのが好印象。特に老紳士と少年のエピソードは、不覚にもキュンときてしまった。少しシニカルな風刺からの人情モノでの締めは、やはり刺さり方が良い。
「声」そのものを売る人とそのお客さんの、どこか童話的なお話です。声売りのもとを訪れる、様々な理由を持って声を求めるお客さんたち。その結末に、ほっこりしたり、クスッとなったり、そして、温かくなったり。声の例えが、なるほど、と思うもので、薬の色から声を想像したり、声から、どんな色だろう、と考えたりするのも、楽しいです。テンポよく読める文章なので、ぜひ、読んでみてください。