(未定)

辻島

第1話 先駆者

正直者が、伝統が、規則が、教師が、修身教科書が、親が、政治家が、世の中が、正しいのか。僕は今、偽りの無い真っ白な心を持って、君に問いたい。


  我は、悪なりや?


僕は、負けたくないのである。どんなに矮小な争いにおいても、必ず勝ちたい。

首席は、僕のものだ。


勝者はいつでも孤独だ。それでも、僕は戦わなければならぬ。

この世は、もう終わりだ。なにもかも、退廃へ向かっている。

僕も、君も、破滅へ向かうしかないのさ。逃げ道は、死しかない。


だから僕は、声をあげた!君たちはそれでいいのか?国の命令に従順に従う

捨て駒のままでいいのか?今こそ僕らは、戦わなければならぬ。


 さあ、共に!!!!立ち上がれ、今こそ。


そこから先は、君も既知の通りさ。あの日僕は、クラスメイト全員で講堂に

立てこもり、拡声器で叫び散らした。


「お前らは、犬だ!負け犬だ!目を覚ませ!立ち上がれ!今こそ、報復せよ!」


みんな、もちろん僕も、自分の言葉に酔っていた。

本気で国を変えるつもりだった。

僕らの名前が新聞にデカデカと載れば、たちまち有名人になる!

そうして、全国民から英雄として讃えられるだろう。


彼らに欠如していたのは、やんちゃさだ。

真面目すぎた。根が腐るくらい真面目だった。

だから2時間後には、クラスメイトは皆おとなしく捕まった。

僕は学長のすねを蹴り上げて、怪我をさせた。


翌朝の新聞に、僕らの名前は無かった。


悔しい。死にたい。僕は奴らに敗北したのか。

教師なんかに。嗚呼。やんぬるかな。

結局正しさは、悪を孕んでいる。大多数の意見が、客観視して悪だとしても、

それは多数決で正しさになる。悪を決めるのは神じゃない。人間だ。


明日、故郷から兄が来る。

今回の騒動の首謀者として、実家に連絡がいってしまったのである。

僕の家は厳格だ。人様に迷惑をかけたとなると、こっぴどく叱られるに違いない。

憂鬱だ。逃亡しようかしら。


結局、僕は悪なのだろうか。異端者は、少数意見は、排除される運命なのか。

日本における甚だしい集団意識も、ここまでくると、病気だ。

ムラ社会において~などと御託をならべるな。

今、この現代に視点を置いて、考えて欲しい。

僕がこんなことをいうのは生意気だけど、こんなんだから

外国に遅れをとるんじゃないか。


兄さん、僕は決めました。いつでも僕は、正しく険しい道を行きます。

僕が時代の最先端に立って、未踏の道を踏み分けて行きます。

進んで悪者になります。人様にも、たくさん迷惑かけるつもりです。

どうか、止めないでください。僕は、世間の大きく理不尽な何かに、

負けるわけにはいかないのです。


君は、僕と一緒に来てくれる?

いや、きっとだめだろうね。大多数は、それを許さない。


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(未定) 辻島 @miko_syuji619

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