『 クロぶちわんこ と トラがらにゃんこ 』

かえる

―― クロぶちわんこ と トラがらにゃんこ ――

      ◇ ◇ ◇


 クロぶちわんこは、いいます。

 ぼくの声はまるで、どんどこひびく太鼓たいこのように立派なんだと。

 トラがらにゃんこは、いいます。

 ボクの声はまるで、きらびやかなたてごとのようにステキなんだと。


 二匹はいつもお互いの自慢じまんばかりを、いい合いっ子していました。

 だから二匹は、毎日毎日ケンカになりました。

 クロぶちわんこは、トラがらにゃんこのことを、チビだとバカにします。

 トラがらにゃんこもクロぶちわんこのことを、ノロマだとバカにします。


 ある日のことでした。クロぶちわんこの姿がありません。

 トラがらにゃんこは、羽を休めていた小鳥をつかまえて、たずねてみました。

 おびえる小鳥は、クロぶちわんこは〈じどうしゃ〉とぶつかり、死んでしまったといいました。

 トラがらにゃんこは怒ってしまい、小鳥をパクリと食べてしまいました。


 べつのにゃんこが、マヌケなクロぶちわんこ、と笑います。

 トラがらにゃんこも、一緒になって笑いました。

 でも、なんだか楽しくありません。

 ほかのにゃんこたちも、クロぶちわんこをバカにします。

 トラがらにゃんこは、とても嫌な気持ちになりました。


 その日からトラがらにゃんこは、にゃーにゃーではなく、わんわんとくようになりました。

 わんわんと鳴くトラがらにゃんこを、周りのにゃんこたちは仲間ハズれにしました。

 にゃんこなのに、わんこのマネをして鳴くからです。


 それでもトラがらにゃんこは、わんわんと鳴くことをやめませんでした。

 毎日毎日、にゃんこなのに、わんわん、わんわん。


 わんわん泣いていました。


 いつ頃からか、トラがらにゃんこの泣き声は、消えてなくなりました。

 ずっとなくならない、不思議な水たまりだけが残りました。



 おしまい。

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『 クロぶちわんこ と トラがらにゃんこ 』 かえる @ka-eru

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