第5話

その隙をついてヒロシが走り出した。


「おい、こら、待ちやがれ!」


木戸がすぐさま後を追い、四人がそれに続いた。



「くそう、どこにいきやがったあのやろう」


ヒロシは走るのが意外と速かった。


おまけに夜だし廃墟は広かった。


あたりには遊園地の施設がそのままとなっており、人一人隠れる場所などいくらでもあった。


完全にヒロシを見失っていた。


「どこかに隠れてやがるんだ。おい、おまえたちは向こうを探せ。俺は滝本とあっちを探す」


「おう」


「わかった」


「絶対見つけてやるぜ」


三人を見送ると、木戸が言った。


「まさかあんなやろうに出し抜かれるなんて。むかむかするぜ」


「あいついったいなんなんですか」


「ああ、あいつか。公園でたまたま見つけたんだ。ちょうどいいパシリだと思ってな」


「やっぱりパシリですか」


「当たり前だ。あんなやつでおまけに年下だ。どうころんでもパシリにしかならんだろう。後輩で俺の仲間と言えるのは滝本、おまえくらいだ」


臆面もなく、人の顔を見ながらそんなことを言う。


普段はワルだが、滝本は木戸のこういうところが好きだった。

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