死に歩む者
ツヨシ
第1話
肝試しに来た、と言うのはあくまでも名目で、実際は暴れに来たと言ったほうが適格だろう。
完全に放置され、廃墟となった遊園地。
放置されたのは滝本達が生まれる前の話だから、その歴史はそれなりに長かった。
閉鎖されて以降は不良どものたまり場となり、そしてホームレス達の安住の地と、なんの迷いもなくお決まりのコースをたどっていった。
もちろん不良どもとホームレス達が、和気あいあいと仲むつまじく交流をするわけがなかった。
やりたい放題の廃遊園地に乱入して来た不良達は、そこいらの施設を叩き壊すついでに、ホームレス達も襲った。
何度かけが人が出て、警察沙汰もしばしばだったある日、悲劇が起こった。
一人のホームレスが殺されたのだ。
他の県からわざわざ出向いてきた無頼の徒。
秋の満月の下、観覧車で寝ていた一人の年老いたホームレスを殺したのだ。
木刀と金属バットで殴られ続けたその男は、見るも無残な姿になっていたと言う。
犯人は四人の大学生だった。
ホームレスの一人が、四人が乗ってきた車のナンバーを正確に覚えていたため、ほどなく逮捕されることとなった。
殺された仲間の無念を晴らしたとも言えよう。
そしてその事件がきっかけで、ほとんどのホームレスがねぐらを変え、それでも残ったホームレスはこれまで以上に息を潜めた。
集まる不良の輩も減っていった頃、滝本は先輩の木戸から声をかけられた。
「おい、肝試しに行こうぜ」
あの事件があった後、殺されたホームレスが夜な夜な遊園地を彷徨っていると言う。
見たと言う人が何人かいるそうだ。
もちろん本当のところはどうだかわからない。
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