第9話

斧はパンチパーマの脳天を、きれいに二つに割っていたのだ。


「このやろう!」


絶叫に近い声を上げて、カクガリが重量級の鉄パイプを振り下ろした。


ガン


滝本が予想していた以上の大きな音が響いて、鉄パイプは見事にヒロシの脳天をとらえていた。


死なないのが不思議なほどの一撃であったが、ヒロシは眉一つ動かさなかった。


そしてすぐさまパンチパーマの頭から斧を抜くと、横殴りに振った。


一瞬、なにがどうなったのかわからなかった。


が、次の瞬間、ぷしゅっ、という耳障りな音が聞こえてきたかと思うと、カクガリの首から血が噴水のように噴出した。


カクガリはそのまま、棒のように地面に倒れこんだ。


「ふざけんな!」


木戸が金属バットを手にヒロシに向かった。


そしてヒロシの頭部を中心に、次々と金属バットを叩きつけた。


斧を持った右手にも連続してヒットさせ、その衝撃でヒロシは斧を地に落とした。


その動きはまさしく剣道であった。


滝本は聞いたことがあった。


木戸は今ではりっぱな不良の鏡だが、その前は真面目に剣道に取り組んでいたと。


全国大会に県の代表で出場して、いい成績をおさめたこともあるそうだ。


重い金属バットをまるで竹刀のように扱い、反撃の隙を与えない連鎖攻撃を、止むことなく続けていた。


――これで、終わったな。

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