第3話

その後ろを滝本がつとめ、最後尾がヒロシだった。 


中に入るなり、四人はお約束どおり奇声を上げながら、暴れ始めた。


手にした得物で目に付いたものを、次から次へと叩き壊してゆく。


とてもじゃないが、肝試しと言った風情はどこにもなかった。


わかっていたことではあったが。


滝本はそれを黙って見ていた。


しばらくすると木戸がこちらにやって来た。


「おいヒロシ。なにぼけっと突っ立ってるんだ。おまえもなにかしろよ」


木戸はそう言うと、手にした金属バットでヒロシのわき腹辺りを小突いた。


もちろん同じように突っ立っていた滝本には、なにもしないしなにも言わなかった。


滝本は木戸先輩に好かれていた。


その上、普段はおとなしい滝本だが、見た目に反して喧嘩は異常なほどに強かった。


やんちゃが過ぎて窮地におちいった先輩達を助けたこともあり、それゆえみんなからは、一目置かれていた。


しかしパシリを絵に描いたようなヒロシは違っていた。


「なにしかとしてんだよ」


再び金属バットでヒロシをつついた。


いつの間にか、好き勝手に暴れていた三人も集まってきていた。


「おい、つまんねえぞ」


「なにかしろよ、なにか」


「黙ってないで、何とか言えよ」

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