出逢いと運命は時を巡る

普通にやめろ、エセ正義感……

 ──……いや、いやいやいや…本当にやめてほしいね、この正義感ヅラしたこの人は?


 これがボクが初めに思った目の前の人物に対する、第一印象。

 つまり、大切だと言われる第一印象がこの人の場合、ボクの中で最低ランクな訳だ。


 ──まったく…自殺くらい、自由にさせて欲しいな……


 こうして毎日毎日、飛び降りようとしたボクを毎回の如く、地面に叩きつけて止めるのは目の前のカレだ。

 いい加減諦めれば良いものをカレはいっこうに諦める気配はない。

 諦めるどころか胡散臭い例の笑顔でまた止めるのだ。自殺したい自分こちらとしては殊更迷惑でしかない。


「どうしてキミって人はそう毎日毎日、ビルの上から飛び降りるのかな?」


 カレは愉しそうに笑いながら問う。その顔ははなから

 ただ単に気になったから訊いた、とばかりの表情だ。


 もちろんボクにはその質問に答える義務はない。

 けれど答えないのは相手の思うつぼのようで癪だったので、渋々答える。


「良いでしょ、自殺くらい勝手にさせてよ。キミには関係の無い話だろ……」


「関係が無かったらこうまでして止めてないよ? キミ、馬鹿だったりするのかなァ?」


「……ボクが馬鹿ならキミは相当なドアホだよ、クソッタレ」


「酷い言い草だね」


 ボクの言葉にカレはそう傷ついた風でもなく、笑って言う。


「(まったく……笑いながら言う事じゃない…)」


 カレはボクを見てニヤニヤと笑いを浮かべる。









 ──こうして、ボクの自殺は阻まれた。

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死にたがりの道化と笑いたがりのピエロ 幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕 @Kokurei

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