第12話『vs白馬 その2』
黒峰・・・なんて顔・・・してんだよ・・・
それがなぜかはわからないが黒峰の顔はとても憔悴していた。
サッカー部員たちは・・・ボロボロと涙を流す。
(・・・え、何この人たち)
周りのテニス部員や一般人はその様子に困惑して距離を取る。
馬鹿野郎・・・
俺たちはそんなお前を見たかったんじゃないんだよ・・・
フェンスにしがみついてサッカー部員は次々叫ぶ。
「黒峰!!!頑張れよ!!!俺たちはお前のこと応援してるぜ!!!」
「ああ!!そうだ!!!」
「頑張れ黒峰ーーー!」
$$$
無意識にボールにだけは最後まで食らいつく・・・
転んで弱弱しく立ち上がる。
バクバク鳴る心臓を押さえて・・・
息を整える・・・
ゆっくり・・・ゆっくりと・・・息を吐く・・・
なぜだ?
こうなるとわかっていてなぜここまで頑張った?
・・・
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
そんなこと決まっている・・・
もし勝てば・・・
強くなれば・・・舞浜に・・・
『振り向いてもらえるかもしれない』って思っていたからに決まってるッ!!!
ラケットを握る手に・・・力が戻る・・・
強く・・・ボールを叩く
放たれたボールは直線状にネット上に待ち構える白馬へ飛んでいく
「フラットボール・・・アウト?」
ボールを見送る白鳥・・・ボールの軌道は彼の予測からズレて・・・ストンと落ちる
「・・・入った?」
(いつもの刷り上げるスピンボールじゃない・・・フラット気味に強く叩くことで・・・回転量が増しているんだ・・・)
黒峰は喜ばない。
その姿は謙虚で礼儀正しく見えるだろうか・・・
正直、黒峰の中に・・・喜びなんて感情はなかった。
ただ・・・ひたすらに・・・その歪んだ動機に突き動かされる。
「・・・」
黒峰が押し始める。
フラット気味のスピンに白馬のボレーが乱れ始める。
流れ・・・
ああ・・
流れ変わったな・・・
そうそう、これだよ、これが見たかったんだよ・・・
全く、遅いんだよ
「行け行け黒峰ーーー!!!」
「頑張れ黒峰ーーー!!」
$$$
7-5、黒峰の勝利
最後まで予断を許さない試合であった。
最後の握手・・・
「今日は完敗だ」
爽やかな白馬の笑顔・・・
眩しすぎて、浄化されてしまいそうだ。
(『今日は』か・・・俺はいつも完敗なんだけどな・・・)
「ひとつだけ・・・聞きたいことがある」
「正直、お前の事、普通ぐらいでそこまで強くないと思っていた・・・だからこそ、知りたい・・・どうして急にそんなに強くなったんだ?」
「・・・え」
言葉に詰まる黒峰
「私も気になるなぁ・・・」
乗っかる舞浜・・・
「・・・」
「・・・」
言えるわけ・・・ないだろ
その理由は謎のまま・・・
黒峰はさらに強くなっていくのだった。
『校内一の美男美女カップルに嫉妬してテニスがどんどん強くなっていく俺どうなの?』 @haidoroponnpu
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