田舎のほのぼのとした物語のなかに深いメッセージが潜んでいる

  • ★★ Very Good!!

ほのぼのとした雰囲気で、楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます。

厳しい感想がほしいというお話でしたので、
私からは良かった点を2点。そのほか、
こうしたらもっとよかったのではないか、という点を1つお伝えします。

まず良かった点は、祖父の親としての葛藤がよく描かれている点です。
自分の過去のとらわれから、自分の息子のよい点を引き出してあげれなかったという後悔。そして、それを孫の子育てにいかそうとした、とても心優しいおじいさまのキャラが愛おしく感じました。

次によかった点は、日本の田舎の雰囲気がよく出てる点です。私も田舎に住んでおりますので、とても臨場感をもって、また、親しみをもって読み進めることができました。ヤンキーでも純朴な男友達や、一花ちゃんのような気立てのよい女の子。ふたりとも友だちにほしいな、そう思いました。

さて、一点だけ、もっとこうしたらよかったのではないか、という点をお伝えします。それは、「平凡と非凡のぜひを問う」というテーマがちょっと伝わりにくかったのではないか、ということです。

どういうことか、といいますと、祖父の中での平凡・非凡のセットと、息子や孫の子育て場面での
平凡・非凡のセットの意味合いがずれているように感じました。

祖父のなかでは、平凡は田舎で淡々と生きることで、非凡は生まれが金持ちがゆえに嫌なことがあったこと。それに対して、子育てのシーンでは、平凡は同じですが、非凡はその子の才能を伸ばすことになってるかと思います。

ですので、もし、平凡と非凡のぜひを問うのであれば、それを揃える必要があるかと思いました。

しかしながら、ここまで書いていて気がついたのですが、
この小説のテーマ、メッセージは、「我が道をいけ」ということではありませんか?

もしそうであれば、
与えられた境遇からの逃避、という、
祖父と父に共通する環境を描きつつ、そこからの両者のその後の行動の違い、結末の違いをはっきり書くことで、それに対して主人公がどう考えたのか、どう生きようと思ったのか、その学びや葛藤を中心に据えていいのではないか、そう思いました。全体的に、“平凡な”というワードに不必要に物語全体がひっぱられた印象です。

ただ、
いずれにいたしましても、ほのぼのとした雰囲気のなか、非常に読みやすい文章で楽しい時間でした。”我が道をいけ”という部分も、とても共感いたします。
大変な労作ありがとうございました。かさかさたろうさんの、
これからの創作活動を楽しみにしております。