蝶よ、蝶よ。

 その羽の色、忘れたか。

 生きる為に忘れたか。


 ある蝶を見る。

 その羽は木の葉に似た色をしている。

 それは蝶の進化の証。

 生存競争から生き残るための進化。


 だが思うのだ。

 元々は、その蝶の羽はどんな色をしていたのかと。

 もしかしたら、眩いばかりに美しい羽ではなかったのかと。


 蝶は生きる為に、己の羽の色を忘れた。

 それを進化というのなら、それは――


 蝶よ、蝶よ。

 その羽の色、忘れたか。

 生きる為に忘れたか。


 その羽の色を無くした蝶はきっと――羽亡き蝶。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

狭間のセカイの終わりに 白河律 @7901

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ