狭間のセカイの終わりに

白河律

   昔、ひとの心が作り出した世界には、みんなの夢を守る魔女がいました。

 その世界には、ひとの悪い心が生み出した怪物達がいたからです。

 その怪物達を狩るのは、魔女である女の子。

 彼女はある日、心の中の世界に迷い込んで来たある男の子と出逢いました。


 魔女の女の子は言いました。

 「あなたは誰?どうしてこの世界に来てしまったの?」

 男の子は、名前を名乗ってから言いました。

 「僕は家族を事故で亡くした後、気が付いたらここにいたんだ」

 「そうなの。それなら暫くここにいるといいわ」

 「そうするね。僕にはもう帰る所が無いから……」

 男の子が悲しそうに言いました。

 こうしてふたりは、ひとの心の中の世界で一緒に過ごす事になりました。


 男の子が魔女の女の子と過ごす世界は、不思議な所でした。

 暖かい春かと思えば、次の日には暑い夏になったり、涼しい秋にもなったりします。

 またある時には、世界の一面が白い雪に覆われた冬になったりもします、

 そこには、男の子が絵本で見たようなお化けや悪魔が出ました。

 魔女の女の子は、それら怪物を不思議な杖で狩り取っていきました。

 だから男の子は少し怖かったけれど、その世界にずっと女の子と一緒にいました。

 それにその世界にあるのは、恐ろしい事ばかりではありません。

 時には雨の後には虹が出て、夜には綺麗な星空になり、世界中が色とりどりの花に満たされる事もありました。

 それをふたりで眺め続けていました。


 ふたりで過ごす時間が増えていくと、いつしか魔女の女の子は、男の子を元の世界には返したくなくなってしまいました。

 女の子も、この世界にずっとひとりでいたからです。

 だからある日、女の子は男の子に聞きました。

 「あなたは元の世界に帰りたいと思う?」


 「分からない」

 男の子はそう言いました。それから女の子に聞きました。

 「君はずっとひとりでここにいるの?帰らないの?」

 女の子は言いました。

 「私はここから出られないの。昔、お母さんを亡くした時に神さまにお母さんが生き返る魔法の杖をお願いしたから」


 魔法の杖を手に入れた女の子は、お母さんを生き返らせました。

 その代わり、魔女になってこの世界でずっと怪物を狩らねばならなくなったです。

 「それは酷い神さまだ!」

 男の子は怒りました。そんな男の子の手にはいつしか、折れた剣がありました。

 「僕がその神さまをやっつけてやる!」

 「待って!お願い!」

 男の子は女の子か止めるのも聞かずに去って行きました。


 それから暫くして魔女の女の子は、神さまを殺した怪物に出会いました。

 女の子にはその怪物が誰か分かってしまいました。

 「おかえりなさい……」

 女の子は怪物を魔法の杖で狩りました。

 その瞬間、世界は真っ暗な闇になりました。

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