或る喫煙者の独白

黒紫蝶

或る喫煙者の独白

 紫煙が夜空に揺蕩う。何だか今日は肌寒く感じる。黒いキャミソールのワンピースと、同じ色の長い髪が南風に吹かれ、ゆらゆらと波打つ。左手に持っている煙草が赤く煌めき、少し短くなる。タール数17のそれは、吸うたびにラム酒のような芳醇な味と香りを醸し出す。煙草を咥え、深く吸い込む。ジッとフィルターの焼ける音がして、また少し短くなる。何だか無性に切なさを覚えた。

 思えば、あれは丁度この位の気温で、今日と同じ格好だったはずだ。肌寒いねと私が呟き、あの人は2人であったかくなろうかと囁いた。そうして乱し、乱されエトセトラ。まあ、あの人との関係はもう終わってしまったのだけれど。始まり方がロクなものでもなかったから終わりもあっけなかったと記憶しているが、それでもあの時の自分の気持ちは本物だったと思っている。

 嗚呼、何だか切なさと虚しさと、ほんの少しの苦さが胸を支配する。そんな自分を嘲笑うかのように、傍らに置いていたあの日と同じ、ロックのバーボンがからんと鳴った。

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或る喫煙者の独白 黒紫蝶 @kokushityo02

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