第3話 そして

私達は地区大会の球場に向かうバスの中にいた。

私はどうしたのだろう、涙が止まらない。

「先輩?どうしたのですか?」

「分からない、分からないのだ」

そう、私は……この大会が終われば引退?

違う、何か大切なモノを失う気がしていた。

「今日は負けたら皆でカラオケに行こう」

「先輩、ダメです勝ちにいきます」

***

朝倉舞の葬儀を終えて私達は部室に行く事にした。

右手が熱かった、行き場のない悲しみにただ呆然としていた。

「キャプテン、しっかりして下さい」

私は少し冷静さを取り戻した。

あいつの私物を返さないとな。

***

「先輩!球場に着きましたよ」

「あぁ」

バスの中で寝てしまっていたのか。

嫌な夢だった。

私は少し疲れているようだ。

それでも朝倉舞の笑顔で夢である事を認識した。

そして、私達のチームは順調に勝ち上がっていった。


準決勝へ向かうバスの中である。

朝倉舞の姿はなく皆泣いていた。

そう彼女は事故で急死したのである。

「今日の試合は棄権しよう」

監督が呟く。

「ピッチャーの代わりは居ますキャッチャーは私がやります」

「良いのか?酷い試合になるぞ」

皆は涙を拭き気持ちは一つになっていた。

***

「先輩、墓地に着きましたよ」

「そうか、あれから10年経つのか」

「何でそんなに嬉しそうなのですか?」

「いや、あの夏一回戦で負けて皆でカラオケに行った夢を見てね」

今日は朝倉舞の命日である、あの最高の準決勝の日と同じく暑い日であった。

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それは青春の一ページ 霜花 桔梗 @myosotis2

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