Chapter 1
「研究体17、起きろ。」
ふっと意識が浮上する。
顔を上げ、親であるマスターの顔を見た。
マスターは相変わらず俺を蔑むような顔をしている。
「お前は今日から協会に行け、そこで吸血鬼狩りをしろ。」
吸血鬼狩り、とはその名の通り吸血鬼を狩ることだ。
近年、吸血鬼による犯罪が増えている。
そこで、国は吸血鬼を狩り、絶滅させると決定した。
無論吸血鬼は反対した、当然だ。しかし、反対した吸血鬼は協会に狩られる。
どっちにしろ殺されるならと、吸血鬼は国を転覆させようと企んでるらしい。
…なぜ俺が、という疑問もあるが、恐らく行けばわかるだろう。
「了解しました。」
気は進まないが、頑張ることにしよう。
✱
「ここか。」
教会を見上げ、立ち尽くす。
そこは、端的に言えば古かった。
まるで、廃墟じゃないか。本当にこんな所が吸血鬼狩りの支部なのか?
「どうかしたのかい?」
自分以外の声がし、ばっと振り向く。
そこには、不思議な奴が居た。
人間でもない、こいつは、…なんだ?
……まさか、
「ああ、勘違いしないで、ボクは吸血鬼じゃなくて…、カミサマだよ。」
顔を歪めて笑う、寧ろ、こいつが吸血鬼ならよかったのに、と思った。
闇をも思わせる漆黒の右目、美しい桃色の髪、不気味さすら感じる整った顔、その全てが不気味だった。
こいつがカミサマ、…カミサマとは、本当に居たのか。
「…ふふっ。キミ、中々面白い反応してくれるね。」
………?
何故、殺そうとしない。それが目的では無いのか。
問いかけようとしたが、喉がひゅっと鳴るだけで、声が出なかった。
俺は、随分とこいつを怖がっているらしい。
「ボクは、キミを殺すことが目的じゃない。寧ろ、キミの、…雇い主?上司?あれ、ボクはこの子のなんだろう、牡丹。」
後ろから女が出てきた、こいつ、何時から居たんだ?
「知りません、ですが雇い主や上司という認識でも大丈夫でしょう。兎も角、この方は貴方よりも上の立場にいるということです、研究体17。」
「……お前らは、なんだ。」
カミサマは、笑顔で答えた。
「ここの、キミが言う廃墟のような教会で働いている、協人だ!ボクはヒトではないけどね。」
そうか、こいつらが…。
しかし、ひとつ疑問がある。
ウィンクする必要はあったか?
協会と吸血鬼 @aoba___132
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