今、目の前には象牙色をしたロープがぶら下がっている。

 私は今日、首を括る。恐怖はあるが、これから先を生きていく方が遥かに恐ろしい。無限に続く生き地獄より、一瞬の、死という苦しみを、私は選ぶ。


 過去をしたため、やはり死んだ方が良いと思った。未練はない。私にはもう、自ら命を絶つ以外に救われる方法がないのだから。

 遺書の代わりに書いたこの文を誰が読むかは分からないし、誰の目にもとまらず処分されるかも知れないが、もし現在、誰かが読んでくれているのであれば、勝手ながら頼みを聞いてもらいたい。この男はかく死んだと、あなただけでも覚えていてほしいのだ。それだけで、私は死後に希望を見い出せる。だから、どうかお願いする。私という人間が今日まで生き、そして死んでいったと、あなたの記憶の中に留めておいてほしい。

 

 それでは、名も知らぬ人よさようなら。どうか、お元気で。



 平成二十九年 七月十三日。


 真中 博隆。

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