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血染めの手4

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093089613307135

カオ様は自身の死期を悟っているようだった。

 ちょっとした傷や病気でも致命傷になる時代に四十年もよく生きたものである。苛烈な世界で安らかな最後を迎えられるのは、この上ない幸福であるようにも思う。





 カオ様が死ねば俺が長になるのか。





 間近に迫っているであろうその日。会社の業務引継ぎとはわけがちがう責任と重圧。悩みの種ではあるが、だからこそカオ様が存命のうちにハルマとの問題を処理できるのは俺に前向きな感情を与えた。





 当初は長期計画にて関係改善を進めようと思っていたが、結果こうなるのであれば開戦に踏み切って正解だったかもしれない。





 俺はそんな事を思ってしまった。この戦いで何人の命が失われるのか分からないのに、また、戦うという選択を選ぶまでに多くの血が流れたというのに、俺は自身の身の振り方や今後の立ち位置などばかりに目がいっていた。平和だとか人を救いたいとかのたまっている人間の根幹がこれである。義務教育の中で植え付けられた安い正義感、生命倫理を振りかざしている人間が人命よりも今後の処世について考えていたとはまったく笑止。しかも、この時の俺はそんな事に気づきもせず、早期決戦の有効性についての肯定的な見解を脳内で展開していたのだった。できるだけの精神的な気楽さを得ようという心理が活発に働いたのである。性根が腐っているといわれても否定はできない。

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