明日へ。

雨闇

~Prologue~

しょうside

ここは、人々と車と、機械が忙しなく行き交う、東京、渋谷。

そんな人々に紛れて歩く俺は、多分、何処にでも居る二十歳の大学生。

せわしく行き交う人々には、すれ違った一人一人の顔を見る余裕もなく、ただ暗い顔で、手元を覗き混んでいる。

耳にイヤホン、手にスマホ。

別にこんな社会が悪いといっている訳じゃぁない。

ただ、明日にはもう見れないかもしれない景色を、一瞬たりとも見逃してはいけないと、そう思うだけだ。

そう、あの時のように。



柊《しゅう》side

たったの六年。

でも、俺等にとっては長い六年だった。

特に、当時の眠れない夜は、長くて、長くて、もうずっと朝が来ないんじゃないかって、何度も思った。

彼奴等がいなければ、俺はもうダメだったかもしれない。

たったの中二に何ができる。

大人は言った。

その中二が、今では二十歳、立派な成人だ。

いまだに殺風景な俺等の町を見る。

一瞬だった。

たったの数分で、世界は変わる。



和希《かずき》side

東京は、もっと広くて、自由な場所だと思っていた。

今では、毎日布団からも出たくない。

町に出れば木がなくて、日差しを遮るものがない。

ずっと、あそこの方が自由だったんだ。

いつからだろう、布団から出なくなったのは。

星からの電話は毎日来る。

でも俺、あんなの見て、立ち直れるわけないじゃん。



怜志《さとし》side

好きだった活動も、今ではバラバラになった。

当然だ。

あんなことがあって、また笑えるわけない。

目の前で起こったあの出来事のせいで、僕らは孤独になった。

何もなくなって、全てがどうでも良くなった。

“仲間”と並び、あの静かだった海を眺めるなんて、もう不可能なんだ。

殺風景な街を、柊とただ見つめる。

どんなにこの景色が彩られても、あの日々は、もう戻らないんだ。



大翔《まさと》side

ニュースでは、政治家の汚職事件と、神奈川で人が殺されたってのと、トランプの話題で、バライティーに切り替わった。

最近は、つまんない話題を大袈裟に盛り上げて、退屈の他ない。

テレビの電源を切って、パソコンをいじる。

こんな退屈な日々になったのは、ちょうど六年前くらいからか。

起きて、遊んで、寝る。

あー。

だりぃ。

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明日へ。 雨闇 @GunTwiggz0306

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