その地には、滅ぼされた亡国があった。国の名はアガルト。国を失った人々は、ならず者となって侵略者たちを襲う強盗団と成り下がる。
そんな強盗団『アガルトの夜明け』に、1人の青年と少女がいた。
人を殺すことしかしらない青年イヌと、人を殺すことができない少女ネコ。
『アガルトの夜明け』で畜生のように扱われながらも、暗殺という訓練を通じて2人は絆を深めていく。
そしてイヌには、ネコには言えない秘密があった――
自身を支える『約束』とネコとの絆に苦悩しながらも、やがてイヌは自由を得るために自身を支配するアガルトの夜明けに反旗を翻す。
全ては、かけがえのない少女を守るために。
青年は少女を救い、自由な風になることができるのだろうか。
盗賊団の斥候兼尖兵として暗殺者として育てられた青年……名はイヌと名付けられた。彼は自身の心と自由を犠牲に「アガルトの夜明け」の頭領に命を握られていた。
その反面、彼はアガルトの亡霊と呼ばれ、暗殺者としても恐れられていた。
そんな彼の前に、陥落した町の戦利品として年端もいかない少女が連れてこられた。ネコと呼ばれる少女に家畜の名を持つ少年は近しいものを感じ、彼女もこの世界で生きられるように盗賊団の頭や仲間達にある提案をする。
ネコに備わった身体能力を利用し、断崖絶壁に聳え立つ敵軍の砦攻略に一役買って貰おうとするものだった。
ネコの存在はイヌに何をもたらすのか…。
戦火の中、血生臭い世界で二人の少年少女がそれでも生きようと足掻いた軌跡の物語。
ややダークな大人向けのボーイミーツガールといったところか。
主人公のイヌは、およそ人間の尊厳を持たないヒエラルキーの最下層として生きる少年だ。命令とあらば殺戮さえもいとわないまさに飼い犬である。しかし奪うことは命じられども、与えられることはない。
そんなとき、戯れにあてがわれたネコという天真爛漫な少女に、彼は心惹かれていく。
最初はよくあるアウトローの成り上がりストーリーかと思っていた。だが油断めさるな、この物語は進むにつれ、イヌとネコは大きなうねりへと飲み込まれてゆく。彼らは一体どうなってしまうのか、イヌのいう約束とは。
今後の楽しみな作品のひとつである。