少女は家族の優しさに包まれて……。

 早熟の天才肌の作品。記憶喪失になってしまった一人の少女。そしてそれを取り巻く少女の家族の関係性が、よく描かれています。少女の苦悩や、少年の焦りや責任感のような感情表現が豊かで、作品に引き込まれます。短いながら、少女を中心とすることで文章全体がまとまり、最後の終わり方も絶妙です。少女が自分の小さな秘密と、大きな感情をあらわにする時、少女の痛みが、読者の心を打ちます。これまでの家族と少女が歩んできた道。これから家族と少女が歩む道。彼らの『MEMORY』の分岐点を鮮やかに描いた作品です。涙もろい方は、ハンカチの御準備を。

その他のおすすめレビュー

夷也荊さんの他のおすすめレビュー1,169