エピローグ 


「ねっ。ゆうきっゆうきっ!これなに?! 」

「蟹だよカニ。松葉がに。下手に運ぶと手足取れて買い取りになるからな。一箱一万だぞ?お前とゆーかの一ヶ月のミルク代ぶっ飛ぶからな?」

「きゃん?! それは気をつけよう。よいしょっよいしょっ。」



あのあと数ヶ月後に、ハナは華子に戻った。


僕らは、戻るまでの数ヶ月、あちこちを旅して回った。

色んな場所、色んな景色を一緒に見た。


旅の途中、ハナが地図を肉球で指差し?て行きたがった、秩父の山岳地帯を走ってる時、仲睦まじく走る二台のバイクを見かけて、あまりの嬉しさに手を振ると、彼と彼女も覚えてくれていたらしく、合流して何日か一緒に旅して回った。

その時二人に、僕と華の秘密を打ち明けると、彼らは快く協力してくれることになった。


ハナが示した場所は、秩父の山奥だった。

四人でその場所を探して向かうと、そこは「大口真神」という太古の犬の神様を祀ってある小さな祠だった。


着いたとたん、ハナが僕の腕に軽く咬みつき、自分の手にも傷をつけ、二人の血を祠に垂らすと、ハナの身体が輝き始め、みるみる華子の身体に戻っていった。


そして華は、僕たちに言った。


「ありがとうゆうき。

ありがとう。そうとくんとみいちゃん。

このおおかみさまがね、条件付きで人間界に降ろしてくれたの。このひと人間嫌いで有名なのよねー。でも、ゆうきを守りたかったから、私は条件を受け入れたの。」


みいちゃんが裸の華に、自分のライダースをかけながら聞いた。


「条件はなんだったの…?」

「お前が人間を慕うのはいいが、もしも人間がお前を心から愛した時は、元の犬に戻すぞよ。って。腹立つでしょ?このひと。バカじゃないの?」

「まー!ほんと。何様なの?! 信じられないひとね?…で、なんで戻れたの?元に。」

「お前を愛する人間に傷をつけ、そいつとお前の血を捧げたら赦すぞよ。ってさ。頭イカれてるでしょ?このひと。」

「バっカじゃないの?! ドラキュラかって話しじゃん?犬でしょあなた?」


二人が大口の真神にぷんすか怒ってるのを見て、僕とそうとくんが慌てて言った。


「いやいや!何様って神様だろ?またバチが当たるぜ?! 」

「もうやめて!君を失うのはもう嫌だから!ほんとやめて?! 」


それから四人で大口真神様に平謝りして山を降りた。

そうとくんとみいちゃんとはまた関西に戻ってから逢おうって約束して、僕たちは家に帰った。


そして冒頭に戻る。


あれから一年経った。



「お前そう言えばあの時、秩父から歩いて来てたのか?」

「よいしょっと! えー? そうだよ?」

「よく家が分かったな?だいたいあそこから700キロは離れてるぞ?家。」

「ゆうきに逢いたかったもん。きそーほんのー。愛の力さ。」


僕は華を思いっきり抱きしめた。



今。華のお腹には新しい生命が居る。

再来月には元気な女の子が生まれて来る。

そうとくんとみいちゃんも見に来てくれるそうだ。

もぅ名前も決めてあるんだ。


勇気の華と書いて「ゆうか」。

彼女が生まれたら

素敵なおとぎ話を聞かせてあげようかな。


僕と華の、夢みたいなおとぎ話を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕とハナのおとぎ話 finfen @finfen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ