王道のエンターテイメント、最高のバトルファンタジー百合

悪魔憑きの女領主・ロアと、悪魔祓いの女中・マリアのバトルファンタジー百合。
百合ジャンルでファンタジーやバトルというのはまだまだ少ない印象ですので、作品があることだけでもありがたい。しかも、この小説の面白さは本物。

ストーリーは王道のエンターテイメントという印象。
読んでいて引っかかる部分もなく、ストーリーも素直で安心して読んで楽しめます。
深い因果で結ばれながらも、どこか距離のある関係にもどかしくなりつつ。
領主と女中、使い魔(悪魔憑き)とその主(悪魔祓い)という逆転した上下関係が同時に存在しているのも面白いところです。
わたしはそれらをまったりと楽しみながら、キャラクターの可愛さや愉快さに身をゆだねておりました……4章までは。

熱い展開が始まるのは5章から。
2人が巷を騒がせていた「吸血鬼事件」の捜査に乗り出すことから、2人の関係は変化のときを迎えます。新たなキャラクターも登場し、舞台も彼女の領地から首都へと変わりました。
歪んだ感情は毒をまき散らし、やがてロアたちの果敢な捜査によって明らかになる「吸血鬼事件」の全貌。
クライマックスで、ついにその犯人とあいまみえるロア。マリア逃がし、孤軍奮闘の末、ついに倒れてしまいます。

ロアを想うマリアと、マリアを想うロア。
最期の瞬間に、すれ違い続けた2人がどのような選択をするのか。
それはぜひ、あなたの目でお確かめください。
わたしはこの小説が――百合としても美味であり、バトルとしても熱く、ファンタジーとしても大満足のクオリティであると胸を張ってお伝えいたします。

なお、前回レビューされていた方と同じくわたしも2人の関係の尊さと百合のパワーに心臓を撃ち抜かれ、四十九日を迎える前に成仏してしまったことは言うまでもありません。
死が2人を別つまで、ロアとマリアが一緒にいられますように。