11#永遠のキョン

 息子キョンのピナは生き延びた。


 両親の屍を越えて生き延びた。


 他のキョン仲間達の屍を越えて生き延びた。


 孤児キョンのピナはひとりで生き延びた。


 あらゆる困難を越えて生き延びた。


 あらゆる試煉を越えて生き延びた。


 こうして、ピナはキョン仲間を一束に纏めるリーダーキョンに成長した。


 


 ある日のこと。

 リーダーキョンのピナは、ふと通りかかった立派な大木に目を奪われた。


 「これは・・・」


 大木の枝々には、無数の風船が引っ掛かっていた。


 そのまるで木の実のような風船群は、それぞれ直径15センチに膨らんで、ある風船は半ばフワフワと浮かんでおり、また他の風船浮力が無くなってくたんと垂れ下がっていた。


 「これは・・・はっ!!」


 キョンのピナは思い出した。


 「これは・・・父さんの・・・角に結ばれた・・・」


 ピナの脳裏には、身を挺して囚われの身のピナを救った父キョンのカイムの姿がフツフツと甦ってきた。



 ・・・はっ・・・!!



 ピナの頬に、一筋の涙が流れた。


 

 木に引っ掛かっている風船の1つひとつから、声が聞こえてきた。


 「『キョン』として生きていく生き様を見せろ。」


 「キョンが安心して生きられる場所を、この脚で掴み取れ!」


 「お前を信じろ!!それが、『キョン』の行く道だ!!」


 微風が吹き、木々の風船をフワフワと揺らした。


 「パパ・・・ありがとう。」


 息子キョンのピナは前肢で涙を拭うと、息を深く吸ってキョーン!と鳴くと、想いをあらたにして仲間の待つ群れに戻っていった。




 キョン~鹿の角の風船


 ~fin~

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鹿の角の風船~キョン編 アほリ @ahori1970

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