「むか〜し、昔」で始まりそうな、江戸時代以前の日本の何処か寒村でのお話。
作品リストを眺めると、本作品を長編化した「かすみ燃ゆ」が連載中。作者が構想を膨らませ、大作に仕立て上げようとしている最中なんですね。そう言う意味じゃ、この短編はプロローグなんでしょう。
(私は完結作品しか読まないので、長編の方は未読です)
さて、本作品。文章に味がある。花鳥風月を愛でるような書きっぷりなれど、風流さではなく艶やかさを匂わせる文章。坂水さんの作品は安心して読めます。
最も面白い点は内容です。
作品紹介文にも書いてるので、ネタバレにはならないでしょう。恋する女は光る。
婚前なら良いんですよ。でも、人生は長い。結婚後は厳しいですよ。
「あっ、あの人、いい感じ」なんて考えたら、配偶者にバレバレ。落ち落ち繁華街も歩けない。(寒村なんで繁華街は無い)
浮気なんて持っての他なんで、表面上は円満にしろ、夫婦仲は冷めますよね。新婚時の心境を死ぬまで維持するなんて不可能。光度が落ちますよね。そうすると円満離婚に突入しそうな気もする。
下らない事をツラツラ考えたら、レビュータイトルになりました。
でも、本作品は面白いです。
短編にはMAX2つが信条ですが、星3つ入れました。
恋をした女の体は光る、という風習を持つ里。かすみの身体は18になっても光らない。
その所以は、親の業か、生来の里の者とは異なる器量か。天涯孤独のかすみは、里の中の異質な存在として「かすのみ」扱いを受けることとなる。
だがしかし、かすみには秘めたる秘密があった。己が情念を怪しく燃やし、許されざる者との契りを交わす。
里山の風習や母親の業など、答えの提示されない謎を散りばめたまま、物語は淡々と、時に情熱的に語られていきます。
怪しくて、ものがなしく、そしてどこか芯の強い燃えるような雰囲気がとても好きです。
不思議で情念を感じる奇譚がお好きな方でしたら、ぜひ。