第二回 『旅糧』

「はろはろ~突然ですが今夜もお届け、リーンと」

「スパラの」

『オールナイト☆イセカイ!』


「に か い め で す!どーん」

「はい、テレパスパーソナリティは私、白魔導士スパラと」

「魔法剣士リーンです。今夜もしばしお付き合いください」

「まだ二回目ですんでね、もう一回趣旨言いましょうかリーンさん」

「ハイハイこの番組はですね、このイセカイを冒険しようっていう命知らずの馬鹿どもに向けまして楽しい冒険ライフを満喫してもらうためのワイワイトークを喧嘩大安売りスタイルでやっていく番組でっす!」

「満喫してるのは私たちだよねえ」

「いやもう、そういう仕事なんで」

「羨ましいのォ、さてです、この番組では皆さんからの曲のリクエスト、ちょっと気になるあれこれ、冒険する上での愚痴!なんでも結構です、テレパスをお待ちしています。座標はこちら、114.514.1919」

「今日のテーマは先週テレパスいただきました、TN『もももっち』さんの質問『おススメの旅糧りょりょうは?』ということで、『旅糧』!」

「深夜だってんのに食い物の話を毎週するのかな?」

「思いを馳せつつ、一曲目はTN『むらびとCくん』のリクエストでアンナ・ボンヌ『リングベルド勇者列伝』から『征竜王ギルモア』です」


「アンナ・ボンヌも今や時の人、宮廷という宮廷に引っ張りだこらしいですよ~」

「今年の桂冠詩人賞確実って噂ですね」

「今年ってまだ半分残ってるんだけどな、だいじょぶかいな」

「とにかくここ三か月のオリハルコン音封珠ランキングは毎週トップテン入りで、このままだとドリスの記録更新ですって」

「ドリスっ……」

「じゃあ今日のテーマ『旅糧』、ですけど、私たちのおススメ話しときますか」

「おススメね~え、先に言っときますけど、マジ好みの問題ですんで」

「まあ王都の旅糧専門店に置いてあるレベルだったらどんなのでも問題ない」

「間違いない(笑)」

「移動距離を見極めてバランス良くね」

「私、面倒な時はレザード製薬のエイチピーメイト」

「あれはビスケット系の中では相当美味しい」

「しかも栄養考えてる、携帯食料界の革命児や」

「でも口が超モサモサする……」

「ビスケット系は水の減りが早いのが短所」

「調理の必要がないのが長所」

「切羽詰まってるときって結構現地調達しませんか?」

「それは私たちの旅が行き当たりばったりだからで普通は切羽詰まりません」

「魔法が使えんよく分かんない山の中で食料が尽きる経験とか」

「旅は計画的にね!」

「山だから山菜生えてて助かりました!」

「ポーションで煮込んでおけば大丈夫って風潮あるよね」

「いかん、真似をしたらダメな方へ、スパラちゃんテレパス読んで」

「ほいでは、TN『メメ子』さん、『リーンさんスパラさんこんばんわー』こんばんわー『おススメの旅糧って言ったらこれしかないですよね?』」

「おおっとぉ、これは自身満々だぞぉ」

「『レ ン バ ス』」

「カンカンカンカン!しゅーりょー!!はい優勝レンバスです!!!」

「諦めんなリーン」

「でもレンバスは……」

「基本エルフしか貰えないんで……」

「知り合いのエルフも食べたことないって言ってた」

「エルフはあんまり旅に出ないみたいですからね。私は食べたことあるよ」

「えっほんと!?いつ、私が食べたことないのに!?」

「え、リーンのおにーさんが前帰ってきたときに貰ったんだけど……」

「うっそ、知らないんだけど。マジか……あいつあたしにはペナントしかくれなかったよ」

「あはは。いや本当に美味しかったです。焼きたてでもないのにしっとりしてて香りは香ばしくて、全然口がモサモサしないの!その日一日お腹空かないし、元気有り余って二人で海水浴行っちゃいました。真冬だったけど。あはは」

「ばかー!そんなことにエルフの知恵を使うなー!」

「風邪ひかなかったよー、あはは」

「馬鹿だからじゃないの?私もレンバス食べてみたいです、ぐすん(涙)。え~次はTN『枕から華麗臭』さんからマリービー『恋人は赤魔導士』とTN『ひとくいラビット派』さんマジカ♡ファイブの『すーぱーほーりーメイスの一撃』二曲続けてどうぞ~」


「新旧アイドルソング対決みたいになっちゃった」

「彼氏が赤魔導士ってのはどうよ?」

「中途半端かな~(笑)」

「白魔導士と赤魔導士はバランス悪いね(笑)」

「あとほら、赤魔導士の人ってちょっと、俺どっちもできるから?みたいな?何か……」

「喧嘩売ってますね、バーゲンセールですよ、赤魔導士の方」

「嫌だあ、いやいや、赤魔導士が大変っていうのも分かるんですよ。攻撃魔法と回復魔法って理論組み立てが逆方向だから、私は無理」

「だから白魔導士はメイスを振るすーぱーほーり~あげるよ~メイスのいちげき~」

「無理やり繋げたね(笑)」

「はは、次のお便り!TN『ラムにく』さんから『僕ずっと『たびかて』って言ってました』ああ…いいんじゃない?」

「いいよね?どっちでも」

「いいよラムにくさん、たびかてでいきましょう。私はりょりょうでいきます。続き~『先日海辺の町で大変美味しい魚の干物をゲットしました、調子に乗ってまとめ買いして鞄に詰めてたんですが、下着が見事に魚臭いです。過ぎたるは及ばざるがごとし』ということで」

「いい冒険者あるあるですね」

「あるある」

「できれば食料と衣類は分けたいんだけどね」

「そんな贅沢は言ってられんですもん、なるなる」

「定番中の定番、干し肉に何度してやられたことか!」

「獣クサい服着て『これだから冒険者は』って目で宿屋のおっちゃんからみられる~」

「違うんです~違わないけど~干し肉好きだけど~」

「でも安物は嫌いです~」

「ドラゴン印の熟成干し肉がいいです~」

「魚もいいよね、いいよ。地元の酒に合う」

「またその話を!」

「酒も飲まずしてなにが冒険者だ!」

「リーンさん暴論、暴論」

「でもないですから!薄めた葡萄酒ごときで酔っぱらうスパラさん!」

「薄くったって葡萄酒は葡萄酒じゃないの」

「食料よりも水分の方が難しいよね」

「ねえ、まあ最悪食料は抜いても……」

「基本的に、何日も野宿するのを前提にしたらダメ。初心冒険者の皆さんメっ」

「でもでも、旅人じゃないんですよ、冒険者なんですよ」

「ふむ」

「前人未踏、突如現れた謎の超巨大古代遺跡に突入するとなったらどーするんです」

「そんなこと経験にないんですけどぉ」

「あったら突入するでしょ」

「するわ。そりゃあするわよ、冒険者ですから」

「古代遺跡には野生動物も野草もないんだからね!」

「スパラは何を持っていくの」

「私、私はチーズと干し葡萄は持っていくなあ。そんでラム酒」

「家でやらんかい」

「理想はそれだけど、実際はパンのひとつでも持っていけば生きていけるって」

「極端な」

「迷宮に落ちてるパンを拾って食いつないでる冒険家のおっさんもいるよ?」

「真に受けないでよ、迷宮に落ちてるパンて。あっても食べたくなくない?」

「そういえば東の国ではコメを蒸してむちむちにしてあるやつ、あれを丸めて塩味つけたのがポピュラーな携帯食らしいですね」

「ああ、おにぎりね」

「それも迷宮に落ちてるって」

「うえっ」

「沼とか」

「なんでじゃ」

「なんででしょ」

「誰かの嫌がらせ?」

「ひどい。食べ物の恨みは十年先まで祟られるのよ」

「そりゃあ初耳ですけど。迷宮ってほんと時々意味分からないもの落ちてるよね」

「一説には我々と交流のない知性ある魔族の落とし物ってね」

「知性ある魔族パン落としすぎでしょ、しっかりしてほしい」

「そうそう、焼きたてのふわふわのパンならいいけど」

「よくない」

「かちかちの黒パンなんか落ちててもね……」

「パンの種類の話じゃないって」

「お皿にしかならないわよ」

「落ちてるパンを皿にするか」

「あ、リーンさんいけませんよ、時間が」

「おおう、いけないいけない、精進が足りなくて申し訳ないです」

「ということで、もももっちさん、参考になりましたか~?」

「賭けてもいいよ、絶対に参考になってない」

「ははは(笑)」

「ぐっだぐだ、これぐっだぐだ」

「来週のテーマ決めたくない?」

「決めるけど(笑)お便りを選んでスパラおねが~~~い」

「では、では、TN『俺が育てた』さん『ぶっちゃけ、白魔法と黒魔法ってどっちが最強だと思います?俺は黒派かな~』」

「これは……これは何を前提としての話やねん」

「そこも含めて総合的に最強とは何だっていう」

「そこからテーマ」

「そうそこから」

「あーダメ、来週ダメですこれは、グダです」

「はーい来週のテーマは『白魔法と黒魔法どっちが最強?』、テレパスをお待ちしていま~す。座標はこちら、114.514.1919 曲のリクエストもくださいね! お別れはTN『ねんがんブレード』さんから、S・E『ロマンシングが止まらない』です」

「あーあっははは、来週もまたここでお会いしましょ。お相手は魔法剣士リーンと」

「白魔導士スパラでした。ばーい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法剣士と白魔導士のオールナイト☆イセカイ 紫魚 @murasakisakanatsuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ