魔法剣士と白魔導士のオールナイト☆イセカイ
紫魚
第一回 『スライム』
「はろはろ~突然ですが今夜からお届け、リーンと」
「スパラの」
『オールナイト☆イセカイ!』
「ひゅ~ぱちぱち~」
「イセカイの皆、元気ですか!」
「今夜から毎週、白魔導士スパラと」
「魔法剣士リーンがテレパスパーソナリティを務めることになりましたよーう!」
「リーンが早速無茶苦茶はしゃいでおります(笑)大丈夫ですか?説明できますか(笑)」
「はーい(笑)ええと、この番組はですね、このイセカイを冒険しようっていう命知らずの馬鹿どもに向けまして、えへ、だって台本に書いてあるんだもん、ええ、馬鹿どもにですね、楽しい冒険ライフを満喫してもらおうという!そういう趣旨でやらせていただきます!」
「いいのそれ、ちゃんと企画通るんだねそれで」
「ま、ま、こんな夜中にテレパス受信してる方なんて暇人でしょお?みたいな、そんな感じが見え隠れですね」
「ということで、この番組では皆さんからの曲のリクエスト、ちょっと気になるあれこれ、冒険する上での愚痴!なんでも結構です、テレパスをお待ちしています。座標はこちら、114.514.1919」
「今回は初回なんで、私たちが勝手に進めていっちゃいます」
「早速ですが曲、いきますね。先週発表されたばかりのあの人、吟遊詩人ドリスの『英雄ガンブロシア叙事詩』の第一章」
「いいですね~」
「いいですね~ドリス」
「第一章激アツじゃないですか?二章聴かせてよスパラちゃん」
「リーンちゃんそんなこと言ってたら夜が明けちゃいますからね?ちゃんと
「実はね、コンサートチケット、ゲットしました」
「マジですか」
「マジです」
「うわ~、リーンちゃん、特定されちゃいますよ」
「やだ怖い!」
「え?どこ会場?北の酒場会場かな?ルイーダさんの酒場会場かな?」
「だめでーす!だめですよ~教えませんよ~。コンサートツアー終わったらレポートを書き下ろす予定なので、是非広場掲示板をチェックしてみてくださいね。宣伝しちゃった」
「あー脱線だ脱線だ、今日のお話テーマは何ですか」
「はい、今日はですね、『スライム』です!」
「おお……」
「スライム」
「奥深いですよ」
「油断できません」
「リーンが初めてスライムと出逢ったのは?」
「実家の近くの森ですね」
「うーん、王道だ」
「ってあんたも幼馴染なんだから、一緒でしょ(笑)」
「そーでした(笑)近所のスライムはね、かわいいですよね」
「ほんと、プニプニしてて、ひんやりしてて、夏場はよく捕まえて食べてました」
「子供の時ね」
「味が無いんだよね」
「美味しかったらあの子たちは絶滅してると思いますよ」
「いーい塩梅ってことかな。だから料理としては、ソースに一晩漬け込むんです。南フォントラ地方です」
「フォントラソースはしょっぱいのが売りなんですけど、一晩漬け込むと丁度いい塩加減なんですよ~地酒が進むの~」
「そうなの~地酒が美味しいの~スライムは細長く切ってね、つるりといただきます。夏の風物詩ってなわけで」
「美味しいスライムもいいですけど、美味しくないスライムもお話しましょうか」
「由緒正しき洞窟スライムのお話ですか」
「冒険者の皆さんなら絶対に教わりますよね、『スライムはスライムでも洞窟スライムは魔物だぞ!』ってね」
「いや、その辺のスライムも魔物ですからと」
「まぁ~でも私たちも、初戦は苦戦しちゃいましたもんね」
「いえいえ、苦戦してたのはあなたですよスパラさん。あたしが冷静に火魔法で仕留めたんじゃあありませんか」
「そうでしたっけねえ」
「初心者の皆さんは、洞窟を進むときは必ず上下に首を振る!はいご唱和!」
「必ず上下に首を振る!」
「上にスライム見えたならば、冷静に一歩退却です。下に水たまりが見えたならぐるりと周囲を見渡しましょう、近くにスライムがいるはずだよ~」
「消化液の強力さにビビッてテンパるパターンは初心冒険者にありがちな失敗なので、初めての洞窟探検は経験者とチームを組むことをお勧めします!」
「魔法使いがいれば対処は簡単だけどね、いない場合は難しいよね」
「大抵の金属は腐食しちゃうもんねえ。装備がダメになるのが痛い、倒しても金にならない」
「囲まれでもしない限りは逃げに徹するのがベター。ベテランが言うんだから間違いない」
「ベテランかなあ、私たち」
「ベテランでしょう……若いとは言わせませんよお」
「ふふふ」
「ふふふ」
「そろそろ二曲目をかけましょうか。ダブルハーピーズで『マッド・ハイ』です」
「ヘビーな曲続けるなあ。ダブルハーピーズも今年ライブツアーやりますね、楽しみです。忙しいなあ」
「最強のスライムって何だと思います?」
「藪から棒にスパラさん、どうした」
「最弱のスライムのお話ってよくやるじゃないですか。最強の話しましょうよ」
「二人で喋るのがキツくなってきたな、さては」
「そんなことないですぅ。私のイチオシは、『ショゴス』です!」
「優勝じゃん」
「諦めないで」
「ええ、ショゴスってスライムなの?怒られない?正気?」
「正気も正気です~あれも粘液状生物ということで、トレスティナ王国スライム学会でスライム属に分類できるって論文が発表されたんですよ。半年前かな」
「結構最近だね。トレスティナの学者は命知らずってことは分かりました」
「じゃあ最強はショゴスですか?」
「異論はないですよ~だって知性があるんだもの~下手したらこのテレパスだって聞こえちゃうんだからやめようやめよう!」
「はいはいやめやめ(笑)」
「弱い奴の話しようや。ある種のスライムに絶大な効果を与える究極の魔法があるそうですね」
「知ってる~四匹以上の同色の魔物を時空の狭間へ消し去る呪文ですね~」
「ニッチ!すっげえニッチ!」
「魔法マニアにはたまらんですよなあ」
「そもそも該当するのがある種のスライムだけ、スライムですからね。いる?」
「時空の狭間に追いやるのはかわいそうじゃありませんかね」
「時空魔法って概して取り扱い注意でしょ、やりすぎだ」
「確かに該当のスライムはスライムの癖に炎をはじき返すこともある初心者キラーですけどね」
「それにしてもやりすぎは否めない」
「無駄魔法頂上決戦にノミネート中だよ」
「なんじゃそら。それはいっぱいあると思うのでまた後日纏めましょうね」
「リーンのお気に入りスライムは何ですか?」
「そうですねえ、うにで倒せるスライム、これやね」
「顔が可愛いもんね」
「そうなのです、それが一番大事」
「三曲目いきます?」
「いっけね、かけましょう。切ない曲も入れましょう。ロレーヌ・ハート『海の声』」
「沁みるね」
「魔物視点で書いた曲ってことで、パクリも大流行でしたよね」
「『魔王の声』とか」
「喧嘩売ってたなあ」
「魔王がポップス聴いてたら今頃死んでた」
「魔王は演歌ってイメージ(笑)」
「ええ、メタルじゃないの(笑)」
「いや、メタルは宗教色が強すぎて……」
「この話もマズイですよスパラさん」
「駄目ねエ私たち(笑)」
「あ、早速テレパスが届いたんで紹介させてくださーい。TN『永久凍土』さん、『こんばんは!今日からですね、頑張ってください!』はーいがんばりまーす『スライムのフォントラソース漬け、うまそーですね(笑)僕がいる辺りだとスライムはシャーベット状です。暖房ガンガンに効かせた部屋でスライムシャーベットにシロップをかけて食べます!口の中で溶けてプルプルになるのがヤミツキ!』」
「うおお贅沢だなあ!永久凍土さん、どんだけ寒いとこにいるんだ」
「シャーベット状のスライムってことは、シンシコラ以北?」
「暖房にかかる魔力のことを考えると冷えてきますね!」
「でもシンシコラ辺りだと、暖房も洗練されてますもんね。魔力暖房と薪暖房のいいとこどりハイブリッドみたいなの」
「そうそう、帝国首都カチリアの大聖火の炉は圧巻でした。とにかく巨大で、火が燃えてるのを見てるだけでドキドキしちゃう。また行きたいなあ」
「お休みが欲しい」
「ほんとそれ」
「そろそろお時間みたいです」
「ありゃ、早いものですねえ」
「はいそういうわけで、この番組では皆さんからの曲のリクエスト、ちょっと気になるあれこれ、冒険する上での愚痴!なんでも結構です、テレパスをお待ちしています。座標はこちら、114.514.1919」
「来週は何をお話するのかな?」
「丁度来たリクエストのテレパスで行きましょか。TN『もももっち』さん、『お二人の話聴いてたらお腹空いてきました~こんな夜中なのに(涙)』ごめーん(涙)」「罪深―い(涙)」「『質問ですが初心冒険者なので
「余計に迷うわ!また夜中に食べ物の話題だけど大丈夫かな皆の衆~」
「悪魔の誘惑に頑張って耐えましょう!白魔導士スパラとのお約束!」
「ではお別れはこの曲で、トリプルシックス『悪魔の子来る前に』来週もここでお会いしましょう!お相手は魔法剣士リーンと」
「白魔導士スパラでした!」
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