この作品の一番の魅力は、何といっても主人公二人のキレのある台詞のやり取りでしょう。
特に、傍若無人で恐れ知らずのアンナが放つ皮肉の数々に、にやりとせずにはいられません。
元死刑執行人だけどちょっと気弱なエリオットとのバディもいい味を醸し出しています。
物語は終始ハードボイルドかつドライな雰囲気で展開されます。
無駄なものを削ぎ落とした文体が非常にクールで格好いいのです。
話の途中で、向かうところ敵なしに思えるアンナが少しだけ弱さを見せる場面があるのですが、そこにきゅんとしてしまいました。
もちろんちゃんとエリオットにも見せ場があります。
それはぜひ、ご自身の目で確かめて見てください。
異世界でドラッグって私はあまり知りませんが、この作品では阿片をモチーフに使い、クスリとカネの問題を扱い、それを軽妙に料理して小説としています。確かに阿片って植物だし、ファンタジー世界にあってもおかしくないですよね。
今までもネットの異世界ファンタジー小説では、ダンジョン飯、ギルド運営、ヒーラー、モブ、ゴブリン、生産職、など、これまでにも異世界ファンタジーには存在していたのに、誰も気づかなかった視点でそれらを主題に扱い成功した作品はたくさんありますが、この作品もそういう系列で語られるべきエポックメーキングな小説です。
ネット異世界ファンタジーにクスリとカネの問題を持ち込んだ画期的な作品でしょう。