百年、平和で軍隊を持たずにいられたものの、諸外国からの侵略の危機に急ぎ軍隊を作らねばならなくなったウルスラ王国。
ではどの軍に力を入れ、どのようにして戦うべきか。
陸軍か、海軍か、空軍か。
ウルスラの国防を担う人々から様々な意見が出て、ぶつかり合います。
私は彼らの姿から、日本の幕末の志士たちに通じるものを感じました。
倒幕・佐幕・公武合体・尊王・攘夷・開国。
日本でも当時、諸外国の脅威から自国を守るにはどうすべきか、国内で意見が割れました。そして自らの道こそが国を救うと信じればこそ、意見を異にする志士同士が争い、多くの命が失われました。
国を想う心は同じなのに。
そのことに比べれば幸い、このレビューを書いている第9話の時点ではまだ、ウルスラの志士同士の戦いは殺し合いには発展していません。
意見の対立する者同士で模擬戦を行い。
その内容で己の主張の正しさを証明する。
模擬戦の敗者は勝者の同志となっていく。それは「敗者は勝者に従う」ということではなく、誰しもが真剣に国を守るための方法を考え、より良いと思えるものがあればそれまでの方法に固執せず改める柔軟さを持っているから。
大事なのは方法ではなく、国を守れるかどうか。
そこがブレず、また模擬戦を通して互いの国への想いを感じ、認め合えばこそ、真に同志として絆を結んでいく――なんと気持ちのいい人たちでしょう。
ウルスラの志士たちの爽やかな気風。
あなたもぜひ、感じてみてください。
美しい湖、人型と航空機型を自在に切り替える兵器、そして未来を夢見る少年少女。古き良き(具体的には紅の豚)時代のスタジオジブリがアニメ化したらどんなにか美しいだろうと夢想してやまない作品です。
ジブリの柔らかなタッチで動くから良いんですよ! 湖とか! 観光船とか! その上を舞う可変戦闘機とか! でも可変戦闘機ってジブリ的ではないような気がするって? あれだよ! 戦闘機としてではなく巨神兵的なものとして捉えれば良いんだよ!
とまあそれはさておき、そういう美しい情景の浮かぶ匠の作品なので、皆さん是非とも第二話までは読んでみて下さい。
そこまで読むと先程挙げたこの作品の魅力が分かって頂けると思います。