蟹〇船
自由を求める者達は生き延びるために手を取り合った。普段は荷物や石油を運ぶために使われている貨物船は難民を運ぶ船になり、国民たちの車は警察を足止めするためのバリケードになった。女子供が船に乗り込んでいる間、男達は警官に石を投げつけるなどの攻撃をする。彼らは逮捕されるのを恐れていない様子であった。
私と親友のチウリはそんな勇気は持ち合わせていない。逮捕されたら間違いなく収容所に送られる。過酷すぎる労働をさせられることになり、外へ出ることができるかどうかはわからない。少なくとも、逮捕者の中で釈放された人がいるとは未だかつて聞いたことがない。臆病者の二人組は、私の家の窓から貨物船に向かう人々の行列を眺めることしかしていなかった。
「おい、貨物船は使えんぞ。ここにいる全員が乗れるだけの広さはあるだろうが、それまでに逮捕されちまう!」
チウリが顔を真っ青にして私に話しかけてきた。しかし、私は元からタンカーに乗るつもりなどない。当然、代替案もある。
「タンカーじゃないとウシュまで行けない訳じゃない。死んだ爺さんの蟹漁船がある。荒波にも耐えてきた船だからきっとウシュまで行けるぞ。」
我がデボン一家は昔から海と共に歩んできた。これまでは海を仕事にすることがコンプレックスになっていたが、今では感謝してもしきれない。パスポート、財布、金、食い物と水を車に詰め込む。これでは、無人島から脱出するみたいだ。私たちは荷台いっぱいに荷物を詰めて、車を船の隠し場所へと走らせ始めた。
ペルメガナ広報資料 @akaisan1950
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