第6話 あなたと一緒に

「何か思ったんだけどね。奈々子ちゃん、カレーが食べたかった以上にさ、お母さんと一緒にいたかったんじゃないかなって」


私はそう言いながら、テーブルにカレーライスを二皿置く。

窓の外はすっかり夜になっている。本宮君と私は、探偵事務所に戻っていた。突然、本宮君がカレーを食べたいなんて言い出すから、事務所の狭いキッチンで作ってみたのだ。


「じゃあ、頂きます」

「い、頂きます」

普段あんまり料理をしない私が作ったカレーが、本宮君の口へと運ばれる。


「どうかな……?」

正直不安しかない。

そんな不安を揺さぶる一言。


「ん~、焦がしたわね」


やっぱりバレた!


「ごめん!スマホでレシピ見ながら作ってたら、うっかり……」


本宮君に作った初めての料理なのに……。

少しだけへこむ私に、本宮君は言った。


「別に。作ってる時の匂いで焦がしてるの分かってたから、気にしないわ」

二口目のカレーが、彼の口に運ばれる。

そして。


「誰かと食べると、ご飯は美味しいからね」

「……っ」


向かい側に座る本宮君は、微笑んだ。


「……うん、そうだね」

彼に微笑み返すと、私もカレーを口に運ぶ。


胸のあたりが、ほんのりと温かいのは。

きっとスパイスのせいだけじゃないのだろう。



            


              fin.

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カレー食べにいきます 月花 @tsukihana1209

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