霧の都を、犯罪者と謎の少女が駆け抜ける

 ジェムと呼ばれる合法ドラッグがまん延する犯罪都市を舞台に、犯罪者だが人のよい青年、トシローと、彼に保護された謎の少女、アンバーが活躍するSF/アクションストーリー。

 トシローは必要以上にしゃべらないタイプの男だが、アンバーや彼女が持つ動くぬいぐるみ、オウルバニーとの掛け合いはテンポがよく、それぞれのキャラクターを引き立て合っている。
 初めはまるで機械人形のようなアンバーが、トシローとの生活でどんどん人間らしくなり、トシローもまた、アンバーと触れあうことで大切なものに気づいて行く。
 彼らの周りに集う他の人物達も、一癖もふた癖もある者達ばかりだ。

 彼らが巻き込まれるさまざまな犯罪は、やがて一つの大きな事件に繋がって行く。それは、霧の都の根幹に関わるものであった。
 拡張現実とは? アンバーの正体とは? 街を裏で牛耳る巨大企業とマフィアを相手に、謎を解き明かしていく。

 ハードボイルドながら、読み手を退屈させない軽快なノリもある作品だ。
 SF、アクション、裏社会、青年と少女の絆、男の友情。こういったものが好きな人に、ぜひおすすめしたい。

その他のおすすめレビュー

御剣ひかるさんの他のおすすめレビュー906