第43話 最終話 女王代行
ナオミとマキュリアルが謁見の間に行くと、既にマリネラとスリーが椅子に座っていた。
スリーは、あれから無口になり、自らの意見をあまり言わなくなった。
毎朝の戦闘訓練だけはナオミとしていたが、それ以外は勉強と本んを読むのに時間を費やしていた。
ニンフルが連れ去られ、彼女が好きな事を無我夢中でしていて、今はいないニンフルをしのんでいる感じで見ていて痛々しい。
お母さんのマリネラは、表面上は冷静にしていたけれど、時々目が赤くなっていて、泣いていたのがハッキリと分かった。
2人共、マキュリアルがナオミの警護をするのを当初は反対したけれども、今は納得したばかりでなく、ルフクーダエの犠牲者の1人だと分かってもらえた後は、良好な関係を築いている。
女王が謁見の間に執事と共に入って来た。
一通り決まった挨拶を交わした後で、女王は今回の謁見の趣旨を話し始めた。
「今回のルフクーダエの一件で、皆様には多大な苦痛を与えてしまいました。
女王として、これからもこの地位に留まるのはエルフ全体にとって良くはないと判断をし、ナオミに女王を譲ることにしました」
お母さんとスリーは、とても驚いた表情になっていった。
「しかし、今すぐではナオミにとって負担になると思い、サーシャリャー魔法学園を卒業と同時に新女王の儀式をと予定しています。
つまり、ナオミが16歳になった春に新女王が誕生します。
それと、これから私は隠居に近い生活を送り、実質的にナオミが女王代行としてやって欲しいと思っています。
如何ですかナオミ?」
ナオミは女王の決心が硬いのを、言葉の上から読み取れた。
ある程度予測をしていたけれど、女王から直接言われると、重い責任が急に肩にのしかかって来た。
マリネラを見ると、さらに驚いている様子で、目をパチクリと何度も繰り返していた。
スリーは驚いた後は、賛同の仕草である頭を何度かさげていた。
マキュリアルは当然と言う様な感じで、何度も何度も頷いている。
「女王様。私1人では、女王代行と言う重い責任を遂行する事は出来ません。
しかし、私には幸いなことに、素晴らしい人達が近くにいるので、その人達と協力して女王代行をやり遂げる事が出来ると思い、謹んで女王代行を受け入れたいと思います」
「ナオミ、ありがとう。
これで民も安心して、この事を受け入れてくれるでしょう。
実の姉が裏切った事は私にとってショックな出来事で、未だに信じられない思いをしています。
先の戦争で、苦戦を強いられたのは明らかにこちら側の情報が筒抜けだったと悔しくてなりません。
その為に、多くの犠牲者を出したのですから。
マキュリアル。姉の本当の姿を私は知りません。
もしよかったら教えていただけますか?」
マキュリアルは、あらかじめナオミに教えられていたので、要点を摘んで話し出した。軍事に関するのは、既にこちらの関係者に全て話していたので、私的なルフクーダエを話すことにしていた。
「女王様。ルフクーダエがダークエルフの女王になったのは最近のことで、およそ20年前になると思います。
ルフクーダエは元々、エルフとダークエルフの過去の歴史を調べる為に度々ダークエルフの領地に入って行って、古い遺跡を発掘していました。
その中で、古い言い伝えの魔剣を発見して、彼女の人生が大きく変わりました。
以前から知り合いだったダークエルフの王に、その魔剣を見せたのです。
そこから2人の人生が大きく変わり、その事がきっかけで2人は結婚をしました。
男の子が1人生まれましたが、疫病で健康を損なって病弱な体になってしまいました。
溺愛している一人息子がこの様になったので、ルフクーダエはおそらく責任の一端はエルフの側にあると思い始めたのだと思います。
疫病は、食糧難の時に起きて、体力のない子供達が犠牲になりますから」
女王は真剣に聞いていた。姉に一人息子がいるので驚いていた。
「そうすると、姉がおかしくなったのは一人息子が疫病にかかり、病弱になった事が原因だと言う事ですね」
「はい、その通りだと思います。側近の人から直接聞きましたから。
戦争を仕掛けたのが、その数年後ですからなおさらまちがいにないかと。
その前までは、一人息子を育てるのを生きがいにしていましたから」
「マキュリアルの話で、なぜ姉が変容したのか原因が分かりました。
それでは本題に戻って、女王代行のナオミに、王剣をこの後渡します。
これで、女王代行としての立場が明確になります。
でも、ナオミは薙刀を使うので、実際に使えるのはマリネラかスリーになりますね」
こうして、女王は実質的に表舞台から去られ、ナオミが女王代行になった。
マザードラゴンを通じて、瞬く間にエルフの間にナオミが女王代行になったと知れわたった。
エルフの惑星カーン 坂本ヒツジ @usasasuke
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