第2話 その男、戦国の魔王

「どりゃぁぁぁぁああああ!!」


迫り来る侍達をガジットの拳が蹴散らしていく。

その光景はまさに一騎当千のようだった。


「邪魔だー!」

「ぎやー!」

「わー!」

「お、鬼じゃ!鬼がる!」


レイビィの少ない魔力だが無理を言って言語変換の魔法を使い、言葉は皆分かる様にはなっていた。

途中で見かけた旗を目標に進んでいたが道中侍に見つかり問答無用で攻撃されたのにガジットがキレて現在に至る。


「うりゃぁぁぁぁあああ!!」

「「「わーーーー!!」」」


形の違う模様が入った旗が2つ程戦場でぶつかっていたが、今ではガジット1人対二つの軍勢の合同となっていた。

暫く戦っていた侍達もガジットに敵わないと理解したのか距離を取り始めた。

ガジットの周りには飛ばされた侍によって山が出来上がっている。


「なんだぁ?終わりか?」

「ひいいぃぃぃぃ…」

「ガジットそこまでにして先を急ごう。この人達と話をしてもいい結果が得られるとは思わない。」

「そうだな。おし、おめーら。後は勝手にドンパッチやってくれ。」



そう言い残してガジットは陣の後ろに戻った。

それを確認しケイトはまた歩き出す。

今度はそれを止める侍は誰1人としていない。

当然だ、先程の光景を目撃した者は皆怯え切っているのだから。

しかし、それを止める者が居るとすれば命知らずの阿呆か、もしくは……


「其処の者共、この先は行かせる訳には行かねぇぜ!!どうしても押し通ると言うのならばこの佐久間信盛さくまのぶもりを倒して見せよ!!」


自分の主を守る侍大将だけであろう。




「どりゃぁぁぁぁああああ!!」

「甘いぞ!甘味処の団子より甘いぞ!」


ガジットが放った拳を受け流しながら信盛は横に持っていた刀を振る。

それを寸前のところでかわし回し蹴りをガジットが繰り出す。

信盛はその攻撃を待っていたかのように掴みに行く。

それに反応したガジットは寸前のところで止め距離を取り再度拳を突き出す。

しかし信盛は刀でそれを受け止める。


「やるなぁ。」

「お主こそ。」


共にニヤリと笑を浮かべ睨み合う。

さて、どうしてこうなってるのかと言うと遡る事に数分前……


「ちょっと待ってください。ボク達は争う気はありません。」


信盛に止められ先に進む事が出来なくなっていたケイト達は説得を試していた。


「ふん!お主らが敵では無い証拠が何処に有ると言うのじゃ!」

「ですから、こうして武器を置いているではないですか。」

「忍びなら仕込み刀を持っている可能性も有る!よって、それだけでは信用できん!」


と、このようなやり取りが約三十分程繰り返していた。

そのやり取りを見ていたガジットが痺れを切らして怒鳴り出した。


「おい、お前!!いい加減にしてくれねぇか!こっちとら訳わかんねぇトコに飛ばされてイラついてるだわ!早いとこ状況を理解して元の所に帰りたいんだ!」

「ほぅ、威勢のいい奴がおるのう。其処のお主、俺と勝負しろ。勝てたらお主らが嘘を言っておらぬと信じてやろう。」


その一言がガジットに火をつけ今に至る。


「どうじゃお主。そろそろ息が上がってきたのでは無いのか。」

「ぬかせ、まだまだこれからだろ。」


そう言い残し二人は距離を取り構え直す。

その様子を離れた位置からケイト達は眺めて……


「あの戦闘バカ、やけに楽しそうね。」

「相当鬱憤が溜まっていたのだろうね。気晴らしには丁度いいんじゃないかな。」


と、呑気に話をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

テレポートした先は戦国時代だった件について ユウやん @yuuyann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る