日曜15時体育館#33




シンが使っている部屋はもともとシンの母親の部屋で、壁にはチェッカーズのポスターと紫色のファーがついた扇子が飾ってある


女の子らしいものといえば

少し大きめのクマのぬいぐるみ



シンが小学校低学年の時、戦隊モノごっこをして

ボコボコに殴って遊んでいた


あの頃は

あんなに大きく見えていたのに





横になりながら窓から夜空を眺められる


さすがの田舎といったところか


星空は眩く、多くの星を眺めることができる





『ブーー、ブーー、ブーー』



真っ暗な部屋に光が灯る



スマホには

【アン】の文字



ここ何日か電話はよく鳴っていた


シンが学校を休んだ初日には、授業の休み時間ごと、放課後、夜とユウから12件、トモから1件


エナやタケからも、レイからも着信はあったがヨウからはなかった



どこから聞きつけたのか

ルナからも





しかし1件も電話に出る気が起きなかった







シンはスマホに手を伸ばすと


着信が切れる



すると

スマホがまた鳴り始める


画面には【エナ】の文字




シンは通話ボタンを押す



エナ『あ、出た』


シン『…』



通話越しに何人かのざわめく声が聞こえる


エナ『もしもーし?いきてるー?』



シン『あ?どした?』



エナ『wwいやいやwどしたじゃないでしょw!』



後ろからユウの声が聞こえる


ユウ『エナ!変わって!



おい!シン!今どこいんだよ!お前学校やめたりしないよな?!ってか一回学校こいよ!』



ヨウ『いや、アイツ停学中だっつうのw』


ヨウの声も聞こえる



ユウ『あぁ、そうか!!いやってか連絡返せよ!既読にもなんねえし!ってかエナの電話は出るってどういうことだよ!この女好き!』


ユウは半分怒っているのか、少し真面目な話し方にも聞こえる



シン『あぁ悪い。』


ユウ『おまえ、辞めるとか言いださないよな?』


確信をつく質問に

後ろにいた複数の声が止む


シン『…そこ。誰がいんの』


ユウ『え?いまねぇ、ヨウとタキとカツ!あとエナとアンちゃんとアイとモエ!』


シン『…大集合じゃねえか。』


シンは耳に当てていたスマホに目をやる

スマホは20:45を表示してた



シンの体内時計は

祖父の家に来てから大きく狂っていた


この2.3日、夕飯は17時台21時には布団に入り

6時ごろには叩き起こされていた




ユウ『…お前のせいで2週間も部活できなくなったんだぞー、責任取れよ』


シン『ああ、悪い。』



『ちょっと貸して』


カツ『おーい。シン。』


明らかにユウより

不機嫌なのか真面目なのか、いつもよりトーンの低いカツの声が聞こえる


カツ『停学中申し訳ないんだけどさ。

今後のこと決めないか?どう考えてる?』



シン『どうしたい?カツは?

俺いない方がやりやすいんじゃねぇ?』



カツ『そういうこと聞いてるんじゃない!

俺はシンが心を入れ替えてくれるなら、戻ってきて欲しいよ!』


シン『戦力的に?』


カツ『当たり前だろ』




ノリ『別にそんなことねぇだろ』



いつのまにかスピーカーホンになっていたらしい


ノリの声が入ってくる


ユウ『イヤ!お前喋るんかい!』


ノリ『戦力的とかじゃねぇよ。やる気ないやつがいても戦力になんねぇし。代わりなんているだろ


やる気ないのに戻って来んなってことだよ。


んで?どうすんのか聞かせてくんない?


まぁあくまでも決めるのはこっちだけど』



シン『…いちいち腹立つな、お前の言い方w』




少し凍った空気を割くように

タキが話し始める


タキ『ぁあー、シン?俺だけど、、


ちょっと熱くならないで話聞いてくれる?



簡潔に言うとさ

シンからの迷惑はさ、もう被りたくないのよ、俺らとしては


でも、間違いなくシンの力はバスケ部に必要なわけよ


んで、今日集まって軽く話してたんだけどさ


正直なこと言うとシンがいなくてもうちらはバスケ部続けるよ


だってシンいなくてもバスケできるもん


逆にシン抜けた方が、一人一人の責任感が強くなるかもね


だから、シンがバスケ部でやりたいかどうか


でも、今まで見たいな素行なら入れたくない


こんな言い方あれだけど、バスケ部はシンのものじゃないから』



タキはゆっくりと

思いを話す



エナ『ねぇ、シン!

シンって自分が1番タイプじゃん?

自分が1番強いとかって思っちゃってる?w』



シン『…いや、思っ…』

ノリ『思ってるに決まってるよな!こいつそういうやつじゃん』


シンの言葉を遮るようにノリが発する


シンは眉間に皺を寄せる



エナ『ね!うちもそう思う!

だからわがままなんだよコイツ!』


エナの同調にさらに皺がよる


シン『…なに?わざわざ喧嘩うりに電話したの?』


エナ『まぁそんな怒りなさんなって!

正直バスケって、1人がうまけりゃ勝てるもんじゃないし、メンバー1人1人に責任があるわけよ


チームで1番点取るやつがエースなわけじゃない、そいつのチームじゃない


多分リバウンドだったら負けないって

カツは思ってるだろうし


いい迷惑してると思うよ?


だからさ

勝負してみれば?』



エナの発言をシンは黙って聞く


ユウ『ん?誰と誰が勝負すんの?』



タキ『だから…


みんなだよ』



タキは全てをわかっているかのように答える


ノリ『だから、みんなシンと1on1するってことだろ?』


カツ『…違う。

ノリも分かってない。』



カツ『多分1対1なら、シン、ユウ、ノリとか強いじゃん。でもリバウンド勝負なら俺やりたい。シンにも負けないと思う』



エナ『そういうこと。…ねぇシン、やってみない?それから決めれば?辞めるかどうか』



エナはニコニコしながら提案する



アン『あ、あの…あのさ!シ、シン君は辞めるテイで話し進んでるよ…シン君は、ど、どう考えてるのかな?』



アンが初めて声を発した


みんなの視線がアンに集まり

アンは恥ずかしそうにタオルを握る



シン『俺さぁ、多分このチーム内はで負ける気なんてないと思う、、ってのが本音



足引っ張るのも、引っ張られるのも嫌だし


カツさぁ、


もし俺がカツにリバウンド勝負で勝ったら

タバコ吸いながらでも、バスケ部いていいの?』



カツ『…それはダメ!俺が勝ったらタバコやめて戻ってこい!』


シンは誰にも聞こえない声で笑う


シン『wなんだそりゃ』


ユウ『俺とは…1on1しろよな

んで俺が勝ったら戻ってこい!』



ノリ『…いや、無理だろ、お前勝てんのかよ』


ユウ『おまえなあ!

お前より可能性あるわ!』


ノリ『はいはい、、ってかシンの得意分野で俺は勝つけど

シンは何がいいの?



ヨウ『なんかこっちは盛り上がってるけど

シン、どうする?』





皆んながシンの返答を待つ



シン『…よくわかんねえから

話まとめてLINEしてくれ』


ユウ『だからぁ!!…おr』



シンはユウの話しの途中で電話を切った








ユウ『っアイツ!!切りやがった!!もーーなんなんだよ!ノリが変なこと言うからだろ!』


ユウは少し怒りながら

ノリに当たる



タキ『しょうがないよ、、

うるさすぎるもん、この席』



ファーストフード店で9人が座る席周りは

いつのまにか誰も座っていなかった


エナ『アンちゃん、少ししか話せなかったねーww』


アン『ッベ、別に!そんなのいいの!今はバスケ部の話だから!」


アンは顔を赤ながら

しかし少し悔しそうに

自分の通話がキャンセルされた画面に目を落とした













次の日の昼休み

シンがいない男子バスケ部のメンバーは

校庭のバスケゴールの下に集まっていた



ユウ『…って感じで昨日シンと話した。


戻りたいとか、なんかそういう話しはわかんなかった!』



タケ『え!待って待って!んで結局どうすればいいわけ?

バスケ部解散?続行?』



ゴウ『だから、打ち負かせばいいんだろ?シンを』


タケ『誰が?w

アイツに勝てる奴なんているの?』




タキ『勝たなきゃだめなんだよ。


俺、シンに挑むよ


多分勝てるのっていったらゲームメイクくらいなんだけど


ちょっと考えたんだけどさ…』




メンバーはタキの話す内容に耳を傾けた


初めはヘラヘラと聞いていた者も


タキの真剣さに徐々に真面目になっていくのがわかった








ヨウ『…うん。タキの案でやってみよう。


それでどうなるかとかはわかんないけど、一旦全員シンに勝つのがまずは目的


アイツがそれでどう感じるか、どう考えるかわかんないけど』



ゴウ『これ、大城先生には言うのか?』



コウ『大城先生にも見てもらおう。

改めて、俺から謝りに行って話してみる』



コウは握り拳をパンッと叩き真剣な顔をする













夕陽を真っ赤に染まる中

シューティングをするシンのスマホが音を鳴らす




【克武バスケ部(仮)】

[シン入部試験来週日曜学校体育館]


ユウからのLINEに既読が8すぐについた


停学から4日目

次の月曜日から停学が明ける

その次の月曜から部活が再開となる


その前日の日曜


バスケ部は体育館に集められることとなった


コウとヨウは大城に頭を下げて

事の説明をした





ヨウ『シンが本気でやる気があるかを、見させてください』



大城は顎髭を触りながらまっすぐな眼差しで

2人に頷いた













シンはバスケ部のグループの長いLINEに目を通し


[OK]

とだけ返信した









ふと未読が溜まったLINEの中から

アンのLINEを開く

[今日から停学って聞いたよ

シン君なら大丈夫だと思うけど、なんかあったら話してね]


[大丈夫?皆んな心配してます]


[今日、女バスは練習再開だったよ

早くまた一緒にやりたいです]


[ヨウ君に誘われて今からみんなでマック行きます!シン君のことみんな心配してるよ]


[さっきは電話ごめんね。みんな心配してた、電話かけてって言われたのでかけました。

エナさんからの電話出てくれてありがとね]


[やっぱりちょっと寂しかった。ワタシの電話も今度は出てね]



[次の日曜日、体育館来るんだって?

女バスは休みなんだけど、、]


[その前に会えないかな?話したいことあるんだけど、忙しいかな?]





シンは鼻で笑った


しつこい女やなぁ


まぁこんな子久々だ


シンは通話ボタンを押した




耳には当てず

画面を見る


数コールすると

通話が開始される




アン『あ、も、もしもし。』


シン『もしもし?



元気?』



アン『シン君?』



微かにアンの声が震えて

息が上がっていくのがわかる



アン『やっと話せた…心配してた。連絡いっぱいしちゃってごめんね


この前ごめんね、あのね、アンね…』


シン『うん、、分かってる。ごめんな』



シンは優しくゆっくり笑いながら話す


アン『ごめんね…あのね、、』


メソメソと泣き始めるアン


シン『うん、ほんとごめん』


アンが堪え泣きしている声を

シンは優しい顔で聞いていた



アン『ごめん…シン君、、会いたい…です』



シン『…うん。。ありがとね』






1階の縁側で

シンの祖父が気恥ずかしそうに

その声を聞いていた

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1on1 駆足登 @kafumo

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