アンドリューがやってきた

 田舎のぼくの学校に、転校生がやってきた。


 あいつの名前はアンドリュー。肌が白くて金髪で、背も高くてイケメンだ。


 みんな、あいつにあこがれた。


 勝手にふくらます。


 あいつはきっと頭いい。


 あいつはきっと足速い。


 あいつはきっと金持ちで、きっとに住んでる、と。


 だからみんなはなんとなく、しゃべりかけにくいで、休み時間の間中、あいつはひとり、すわってた。


 だけどその日の給食で、あいつは列に並んでた。が「社会体けん」だ。


みんなのうわさを信じ込み、あいつの食器にめしよそう、ぼくの指先ふるえてた。


 給食係が手を合わせ、「いただきます」と声かける。


「れっちー(let's eat)」とか言うかなと、みんなはあいつの方向いた。


だけどあいつはな、日本語しゃべって持った。


 みんなはぽかんと口を開け、ものも言えず、持てず。


 ぼくは向かいの席だから、思い切って聞いてみた。


「アンドリューくん、お金持ち?」


「いやいや、ふつうのだよ。」


 周りで話を聞いていた、みんなのあごが床につく。


ついで教室全体に、「ええー!」の声がこだました。


 それからみんなは次々と、アンドリューに話しかけ、いっしょにドッジボールした。


 知らないうちにアンドリュー、「あいつ」と呼べる子になった。


(540字)

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ごろっと掌編 馬田ふらい @marghery

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