第4話

楓はボーッと二人を見上げた。表情が出にくい楓。小学生は白いブラウスと黒いワンピースタイプの制服で巫女の家である茶色のラインがスカートに金色で縁取られていた。


ピンク色のランドセルを背負った木ノ宮楓はボーッと二人を眺めたあとペコリと頭を下げランドセルの中身をぶちまけた。


「楓!!」


「まぁ楓ちゃん、ロック忘れてたんですのね」


二人が教科書やノートを拾うと楓が書いたとは思えない落書きがあった。黒いインクで書かれた悪口。茜にはとても直視できそうもない。水面はそれを手に取り楓を見る。


「楓ちゃんこれは……」


「大丈夫。水面ちゃん、茜ちゃん、私は大丈夫。じぃじがいるから」


機械的なしゃべり方の楓。そう言われても茜には許せなかった。浮かんでくる涙をこらえて楓に向き合う。


「楓、あたし達に言うんだよ?あたしにとって巫女は姉妹なんだ!!はじめて出来た妹は大事にしたい。だから…」


茜が言おうとしてるのを察して水面が明るい声で言う。


「学校が終わりましたら三人で遊びましょう。私は釣りがしてみたいですわ」


「水面が釣りって…」


「ん、ありがとう」


ランドセルに教科書やノートを全部入れるとおじいさんが走ってきた。年に似合わないくらい全力でヨタヨタと走るおじいさん。


「楓お嬢様ー!!」


「木霊のじっちゃん……まだ楓をつけてたんだ…」


「ええい!茜様、水面様、楓お嬢様を守ってくださること感謝いたす!!じゃが、楓お嬢様はワシが」


「じぃじ、学校あるから帰っていいよ。新人さんはじぃじが鍛えないと」


「おお、作用でございますな。このじぃじ、不安で心配ではありますが楓お嬢様のために頑張らせていただきます!!」


楓を抱き上げる木霊は孫娘を溺愛する祖父のようだった。楓も嬉しそうに木霊に抱きつく。


「じっちゃん、あたし達が楓を送り迎えするから大丈夫だよ。それに、じっちゃんがこんなことしてる間にとんでもないイケメンが従者になっちゃうかも」


「なぬ?それはいけませんな!ワシは楓お嬢様と共にあるのです。そんな見た目だけのやつなど断じて認めはせぬ!!楓お嬢様、じぃじは訓練に参ります。どうか無茶をなさらぬよう」


楓をおろして深々とお辞儀をするとまたしてもヨタヨタと走り出す木霊。

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