第6話
「ですが、お二人はもっと神聖な巫女だと理解を!」
「ごめんて!でも春香には本当に助けられてるからさ。巫女とか関係なく友達でいたいんだって!!」
「そうですわね、春香さんは私達の儀式もお手伝いしていただいてますが同い年ですものね。これからもいい友人でいたいですわ」
水面に微笑まれて春香は微かに顔を赤らめた。
「春香はあたしより水面が好きだもんねー。あたしも水面大好きだけど」
「そ、そんなことないわよ!何言ってんのよ!!」
「ふふ、春香さん、崩れましたわね」
「あー………もう!あんた達ね!」
楽しそうに笑う三人はどこにでもいる女子中学生のようだった。
それでも巫女という立場は特別で一部ではファンクラブも出来ていた。二人を見る生徒達の目は近付きがたくも憧れが込められていた。
とある教室では廊下に近い席で男子が話している。
「水面様…可愛いよなぁ。髪の毛サラサラ」
「俺は茜様の方が好きだけどな……明るくて」
「甘いな。お二人とも可愛く美しい、そんなお二人をこの世に授けたお二人のお母様こそ素晴らしいのだ!!」
三人の男子の会話を耳にしたクラスの女子が呆れたようにそっぽを向いた。廊下を歩いていてその会話を偶然聞いた茜達も苦笑いだ。
「あいつらいつもあの話ばかりね。巫女はアイドルじゃないのに」
「ですが好意は自分を高める力になりますわ。ね、茜ちゃん」
「うーん、よくわかんない……」
三人の耳に今度は廊下で話す女子の声が届いた。
「火苗さんが一番格好いい!!見て、このスーツ姿!!」
「私は氷雨さんが好き。眼鏡をかけた氷雨さんの優しい目が格好いい!!」
「なんでそんな優男ばっかなの?私は竜巻さんが好き!!大きくて優しくて面白いから……」
「ないない。竜巻さんはない」
「なんでよー!?竜巻さんよくない?」
女子も女子で異性が気になる年頃である。
「ていうか、いつ火苗の写真撮ったんだろ?」
少し不機嫌になった茜。それを見て水面はクスクス笑いだす。茜は不機嫌を隠すようにカバンで顔を隠した。
「大丈夫、大丈夫。あたしは大丈夫。火苗はあたしの従者。大丈夫。よし、早く教室行こう!!」
「茜様の火苗さん好きは重症ね」
「でも、茜ちゃんがそのままでいられるのは今だけですから……私達はどうなるかわかりませんし」
島に伝わる古い文献を水面は何度も読み返していた。茜や楓には言えないことも書かれている。
巫女とはいつでも人々のために。
巫女とはいつでも正しき事のために。
巫女とはいつでも人の手本となるために。
巫女とはいつでも神様の伴侶となるために。
五人の巫女が揃った時は真の花嫁探しの始まりである。
五人揃わぬ時代の巫女は神の花嫁候補としてその身を神に捧げ新たに巫女をこの世に産み落とさねばならない。
神に最も気に入られた巫女は未来永劫神に仕えその身をもって神を癒し慰めそばにいなくてはならない。
巫女とは神の所有物であり人ではない。ゆえに神の力の一部を受け継がねばならない。
五大巫女 長島東子田川 @toukonagasima
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